そばにいたい。
第2章 二人暮らし
「遥斗ぉー!朝御飯できたよー!」
ハムエッグをフライパンからお皿に移しながら、遥斗を呼ぶ。
「はーい」
パタパタと小さな足音と返事が近づいてくる。
「ぼく、コーヒーいれようか?」
天使の少年は、中身も天使である。
「わ、ありがとぉ、嬉しいな」
遥斗はニコッと微笑むと戸棚からカップを取り出し、ドリップコーヒーをセットして手際よくお湯を注ぐ。
コーヒーの香ばしい香りが広がる
「はい、どーぞ」
「ありがとぉ」
遥斗がいれてくれるコーヒー…自分でいれるより、100億倍美味しい。どんだけ自分でいれたのが不味いんだよって思われるかもしれませんが…ホントに美味しく感じるんだもん。
遥斗は自分の分には、お砂糖とミルクをたっぷり入れて飲む。まだまだお子ちゃまね、とニマニマしていると
「ぼくだって、大人になったらブラックで飲むよ!」
と、唇を尖らせる、私の考えはお見通しか…と、苦笑い。
「あ…そういえば、参観日って来週だったよね?」
「え…あぁ…うん、でも忙しいでしょ…」
遥斗が暗い顔をする
確かに忙しい。今の時期が1年で2番目くらいに忙しい、定時に帰れる日なんて無い。
「や…行く!何としてでも!行く!」
「えへへ、無理しないで」
少し困ったような、でも嬉しそうに笑う遥斗。
私の両親も、会社を経営していたため忙しく、参観日に来たことはほとんど無い。
だから、私は親の来ない寂しさも分かる。分かるから行ってあげたい。
任せて!と言わんばかりに私はガッツポーズを遥斗に向けた。