そばにいたい。
第2章 二人暮らし
さ、帰ろ…と歩き出した途端、今まで遥斗と話していたケータイが鳴る
嫌な予感がして画面を見ると、案の定会社からだった…出ないわけにはいかない。
「…はい、宮下です」
『宮下!すまないが、大至急で大川様のところへ行ってくれ!』
「ぇえ!?」
『システムの不具合があったらしくて…お前のクライアントだろ!』
「…ッ!わかりました…すぐに向かいます!」
チッ!と心の中で舌打ちする。
私のクライアント?お前の尻拭いだろーが!と電話をして来た使えない上司を心の中で罵倒する。
急いでタクシーを捕まえ、行き先を告げる。
車に揺られながら、私は深呼吸をして再び自宅に電話を掛けた…
プルルル…プルルル…
『はい!宮下です!』
「…遥斗?」
『麻衣お姉ちゃん!もう帰りつく?』
遥斗の嬉しそうな声が、私の胸を締め付ける
「…」
『もしもし?お姉ちゃん…?』
「ゴメンね、急な仕事で、帰れなくなっちゃったの…」
『え…』
「ホントにゴメンね…今度っ」
『お仕事大変だね!頑張ってね!』
私の言葉を遮るように、遥斗が言う。
『じゃぁ、ぼく…冷蔵庫の中のプリン食べちゃおーっと』
「うん…ゴメンね…」
『平気だよ!お仕事…頑張って…じゃあ、ぼく、宿題あるから…!』
そう言って電話が切られる…強がってる遥斗の顔が浮かぶ。叫び出したい気分だ。
今朝、遥斗に寂しい思いをさせないって決意したばっかりで、もうこれなんて…酷すぎる。
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