触って、七瀬。ー青い冬ー
第8章 初夜の残像
僕は次の日の朝、その部屋を出た。
色々整理して。
ステージの金は、やっぱりもらえなかった。
高梨との記憶が蘇ってしまう。
使ってしまったら、もうその記憶を手放せなくなりそうだから。
僕は鍵を部屋に置いてきた。
さて、どこに行く。
とりあえず学校にでも行こうか?
学校なら、時間は潰せるし…
でも、両親には居場所がバレる。
どうしようかな…
誰も頼れない…
高梨はもういないし。
先生はまだ病院、頼る資格もないし。
あと、知り合いなんていたかな…
僕は一人だけ思い出した。
でも、いいのかな…
“ もしもし? ”
「あの…僕です」
“ えっと… ごめん、誰だっけ ”
そりゃ、声だけじゃわかんないよな
「七瀬です。夕紀」
“ あぁあ!夕紀!何、やりたくなった?”
翔太さん、軽いなぁ。
でもその軽さが落ち着く。
今までの自分の重さを吹き飛ばす感じ。
「そうじゃなくて、お願いがあって」
“ 変なこと言うなよ ”
「あの、僕を引き取ってもらえないでしょうか」
僕は朝の公衆電話でおかしいことを口走っていた。
“ えーっと…どうしようか ”
「あの、行く宛がなくて。
先生とのことがバレて父が先生を殴って連行されて、母は多分僕を探してて…」
“ なんかすげぇ話に巻き込まれちゃうなー俺 ”
「はい…すみません。でも本当に、翔太さんしか頼れる人がいないんです」
そういえば、高梨は翔太さんを知っているみたいだったな。
“ お前さぁ、流石にもっと頼れるやついるだろ。わざわざ初対面でやった俺じゃなくてもさぁ”
「いたら良かったんですけどね…」
“ マジでいないの? ”
「まぁ…相手が相手なんで…」
まず、親戚には頼れない。
となると、友達?
唯一の友達、高梨からは自分から離れた。
そうすると、…誰がいる?
“ なるほどな。俺ん家来るか ”
「ほんとですか!ありがとうございます」
“ その代わり、言うこと聞けよ ”
「は、はい…」
僕はもれなく翔太さんの性奴隷にされそうだった。
でも、背に腹は変えられない。
とにかく、今は翔太さんしか頼れない。