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触って、七瀬。ー青い冬ー

第9章 木村千佐都の不覚



「うん、俺今馬鹿だわ」



伊織は遊んでた。

いつも隣にいた、他の誰か、
私じゃない女は彼女?

それともただのセフレ?

本人達はどっちでもない、
《友達》とか言ってる。

バッカじゃないの?


「馬鹿が一番大っ嫌いなの」


彼女でもセフレでも友達でも、
私はムカついて、嫉妬して、
死ねば良いと思った。

伊織も死ねば良いと思った。


「うわー応える」

伊織が面白そうに笑いながら、私の腿から上に手を滑らせた。



馬鹿な伊織が私に欲情してるって。
いい気味じゃない?


「俺も嫌いだけど、男が馬鹿な理由、知らない?」


「馬鹿に理由なんかないから」


伊織は絶対このままやる気。


「大不正解」

本当に殴って蹴り飛ばしたかった。
でも私、それ以上に嬉しかった。

伊織は私と額を合わせて言った。


「性欲が理性をぶっ壊すから」


それで、私はどうしたと思う?

突き飛ばす?
流されてヤる?

私はそれよりもっと馬鹿。

伊織にキスした。


「ん…」


ちゅ、ちゅ、って可愛い音が、
だんだんいやらしくなる。


伊織は本当、馬鹿で、性欲の塊。
私はオナホくらいにしか思ってないんじゃない?

だとしても、今まで私が言われてきた言葉を思い出して。

私のことを性格ブスとかナルシストとか、
性悪とか独り善がりとか散々言った。


その上で、私の体に興奮したんだって。


ざまぁ見ろ。


馬鹿はあんたの方だから。
結局、偉そうに説教してても馬鹿は馬鹿、
男は男。

男は私が大好き。


深いキスは伊織が得意みたいだった。

私はこんなに良い素材なのに、まだ誰にも触らせたことがない。

だから存分に楽しめば?
それで後で後悔するはず。

なんであんな女に、って。


「口開けて」


伊織のキスはどうしてこんなに甘いの?

伊織の舌はいやらしい、本当にいやらしい。


明日になれば私はきっとこのキスがしたくて伊織のことしか考えられなくなる。


「んっ…」

伊織の舌は私の歯をなぞっていった。

そして、上顎をつーっと舌先が舐めた。


「んんっあぁ」

この感覚は何?
伊織は馬鹿なくせに、女のことだけは知り尽くしてる。


「喘いでるともっと可愛い」




地獄に落ちればいい。



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