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触って、七瀬。ー青い冬ー

第10章 夜明けの水平線



ぱた、ぱた、と上靴の音が廊下に響く。
今日も部活は楽しかった。


きゃははは、という女子の笑い声もどこかから聞こえてくる。

「高梨君じゃない?」

「ほんとだ、やばいやばい」

どうやら、俺のクラスから聞こえてくるみたいだった。

案の定、クラスから3人組が出てきた。

「あっ、高梨君!お疲れー」

「お疲れ」

愛想よくしとくか。

3人組は喜んできゃっきゃいいながらそそくさと去っていった。

何かやってたんだろうか。
まあなんでもいいけど。

教室に入り、自分の席から荷物を取る。

「…ん」

机の中を探ると、覚えのない紙切れが入っていた。

《高梨君と七瀬君はどういう関係?》


明らかにさっきの3人組の仕業だ。

「…っんだコレ」

丸めてゴミ箱に投げた。


「…いや、」

投げたそれを拾いあげて、ポケットにしまった。なにかの間違いでどっかに転がっていったらやばい。




どっから漏れた?






1週間前、
七瀬と麗子さんの店でステージに出て、
部屋まで行った。
そこで調子に乗って酒飲んで、
ヤったことははっきり覚えてる。


…正直、やってしまったと思った。


確かに酔ってて、
理性はなかったかもしれない。
相手が女なら幾らでも、遠慮なく抱くし、これほど後悔もしなかった。
いつもやることだ。








《高梨さ、酔った勢いだったしあんまり気にしてないかもしれないけど》


…お前が思ってるほど酒に弱くない。




《やっぱり、先生がいいな》


…嘘だろ。




俺はいつもこうだった。
七瀬のことをいじめてばかりだった。


電車の中でだって、あの夜だって、
嫌がることばかりした。

その度に謝った。

でも、七瀬を見てるといじめたくて仕方ない。




「どういう関係だよ…」





“ おい高梨 ”




香田が俺の右足を使い物にならなくした日、香田は言った。






“ お前、七瀬が好きなんだろ ”



俺は何も言わなかった。


香田の行動の意味はその言葉でわかった。

あいつは七瀬が好きで、俺に近づくなという警告をしたかったのだ。

余計なお世話。







隣の机を見た。

もう1週間会っていない。
学校以外会う場所がない。
七瀬は連絡すらよこさないし、
どこにいるかすらわからない。





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