触って、七瀬。ー青い冬ー
第10章 夜明けの水平線
………
「誰から何を聞いたか、
教えてくれない?」
昼休み、体育館前の連絡通路。
俺の目の前に、3人の女子が並んで立っている。
3人とも、きゃっきゃ言って喜んでいる。
俺は苛立ちを隠していないが、それでも3人は笑顔だった。
俺は、ぐしゃぐしゃになった紙を広げて見せた。
《高梨君と七瀬君は、どういう関係?》
「えっとぉ、高梨君にいろいろと教えたい気持ちは山々なんだけどぉ」
「その、怖い人から言うなって言われるから…」
「ねぇねぇ、実際どういう関係なの?」
3人してまともに話を取り合ってくれない。
「はぁ…使えねぇ」
俺は30センチ以上小さい女子に向かって怒鳴り散らす訳にもいかず、悪態を吐くしかなかった。
「高梨君って意外と口悪いんだぁ」
「見た目とギャップある〜良い〜」
「もっと言って〜」
こいつらアホか?
俺は女子に対して割と優しくしているが、今回に限っては強く言わざるを得ない。
「真面目に聞いてもらいたいんだけど、いいかな?
七瀬は今、家の事情で学校に来れないの。せっかく落ち着いて戻ってこようとしても、変な噂が立ってたら来づらいと思わない?」
女子3人は、上目遣いでそれぞれ好き勝手に返事をする。
「それはわかってるけど〜」
「見ちゃったもんね〜うちら」
「噂ってか、もはや目撃情報だし〜」
俺の強気な態度は一気に小さくなった。
一体何を見た?
外で派手なことはしてないはずだ。
「見たって?」
「七瀬君と高梨君っぽい人?が路チューしてたとこ」
「路チュー…?」
身に覚えがない。
ドッペルゲンガー?ただの人違い?
「そう」
「七瀬君の顔ははっきり見えたけど、
相手、高梨君だったでしょ?だよね」
「立ち姿とか横顔は高梨君っぽかったし」
まさか、違うよな?
見間違いにきまってる。
大体、相手が俺って、あり得ないだろ。
外でそんなことするか?
「…誰だよそいつ」
…あの野郎
「あ、ま、間違いだったかなー?」
「うんうん、多分見間違い、見間違い!」
「ごめんなさいごめんなさい!」
女子3人が逃げて行った。
俺に似てる、七瀬を知ってる、路チューするような馬鹿野郎は…
一人しかいない。