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触って、七瀬。ー青い冬ー

第11章 薔薇の蜜



高梨は少し黙って、顔を真っ赤にした二人を見ていた。


そして、くすっと笑った。


「噂、だと思う?」

高梨は僕に目を向けた。
僕は意味が理解できなかった。


「な、何言ってんの」


高梨が変なことを言い出した。
また僕をからかってる。


「俺達が付き合ってるかどうか、知りたいらしいけど?」


高梨は顔を近づけた。


どういうつもりだ、
なにを企んでるんだ?

僕はまたいじめられるかもしれないんだ。
こんな噂が広まったりしたら。

僕は高梨を押しのける。


「神野さん、この人頭おかしいだけだからね、付き合ってないから」


僕は笑ってそう言ったが、
神野は目を輝かせてこっちを見ている。
まるでなにかを崇拝しているようだ。


「は、はいぃ!」


なんだ、その目は!


「七瀬、俺のこと嫌い?」


高梨はしょんぼりして言った。
そういうの似合わないし、
ちょっと引くし!

何考えてんだほんとに。


「嫌い…じゃ、ないけど!」


「じゃあいいじゃん、
付き合ってるってことで。

嫌いじゃないってことは、
俺のことすきなんでしょ?」

高梨はなんでもないように言った。


「…は、はぁあ!?」


いや、好き…だ、けども…
違う、すき、だった。
そう思わないと。
翔太さんがいるんだから…


「本当なんですね!?高梨先輩!」


神野は嬉しそうに言って目を輝かせた。
高梨は僕の肩に手を回した。


「そう、俺達付き合ってる」

高梨はそう言った。


「ちがう!違うから!」


「ありがとうございまぁあぁす!」

「神野さん!神野さ…」

神野はうふふふと笑いながら作法室を飛び出した。



「ちょっと高梨」

「ん?」


高梨は俺の肩に回していたてで、
俺の頭を撫でた。


「何考えてんだよ」

こいつ、また僕で遊んでいる。

薄々、気づいてはいたが
いや、かなり前から気づいていたが

こいつ、
僕が苦しむのを見るのが好きなんだ


「俺達付き合ってるってさ、七瀬」


高梨は僕の頭をまたぽんぽんした。

「付き合ってないし!
ほんと、馬鹿じゃないの?
バカなし!」

僕は頭を振って高梨の手を振り払った。

「え、なにそれ新しいニックネーム?
これから俺バカなしって呼ばれるのか、
うん、悪くない、悪くないよ七瀬君。
もっといいなさい」

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