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触って、七瀬。ー青い冬ー

第11章 薔薇の蜜



高梨が僕を責める声が忘れられない。

あんな声、知らない。

声だけで、僕をあんな風に夢中にさせられる人は他にいない。

また、あの声と唇に触れたい。

こんなことを思ってしまったら、
あの狼の思うつぼなのに…




「…嫌じゃなかったんだ」


翔太さんは僕の頬を撫でた。
僕は何も言えなかった。

…嫌なわけない。
でも、そう言ったら…


「相手は、例のお友達?」

「…」

僕はうなづいた。


翔太さんに一度だけ、高梨にやられたことを言ったことがある。

高梨が本気で好きなのに、
高梨は遊びなんだということ。

その時翔太さんは、
僕がその子のことで悩んでいて辛い時は、俺が慰めるよ、と言ったのだ。


「その友達ってさ、同じ学校だっけ」

「はい」



高梨は翔太さんを知っていたけど、
翔太さんは高梨を知ってるのかな。


「そいつ、伊織でしょ?」


「やっぱり…お互い知ってるんですか」


「知ってるも何もー…」


翔太さんは僕の頬を撫でた。

「な、なんですか」


翔太さんは僕の目をじっと見た。
やっぱり、すごく綺麗な顔だ。
見つめられると顔が熱くなる。

翔太さんは僕の耳を触った。

「ふぁっ、ぁっあ」

そのまま、翔太さんは僕の耳を舐めた。

「ひ、ぁっ、ん、しょ、たさ…」

翔太さんは舌を止めて、耳を犯すように低い声で言った。


「…誰にも、絶対あげない」

「っ…」


ぞくっとするような、初めて聞いた声。

翔太さんは僕に、まだ見せてないところがたくさんあるんだと思い知った。


「ねぇ夕紀、君は俺のだからね」

「翔太さん…」

「分かった?
俺は夕紀を泣かせたりしないし
傷つけたりしない」

「でも僕、泣かされましたけど…」


泣いてもいいよ、なんて


「泣きたい時は泣かせてあげるのが
俺の優しさなんだけど」


「…そういうところ、好きです」


翔太さんといれば、僕は大切にされて、
幸せで、何も支障はないのに


「翔太さん」


「ん?」


そんな目に聞けない。
こんなことを聞いたら、
翔太さんも僕も、気づいてしまう。


だけど、頭からずっと離れない。

呪いのように、頭の中にこびりついている。




…あなたは僕を愛していますか?

「なんでもないです」


翔太さんは僕の額に唇をそっと乗せた。

……

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