触って、七瀬。ー青い冬ー
第12章 赤糸の行方
だから、安心がほしくて、
体を預けてまで、好き勝手触らせてまで、
あのセンセーに味方でいて欲しかったのだろう。
そして、そのセンセーも頼れなくなって、
俺に助けを求めて
俺はその助けて、と伸ばされた手を引っ張って、そのまま友達という関係をぶっ壊してしまって
俺にも頼れなくなって
《先生がいいな》
俺のことが信じられなくなって
あんな嘘までついて逃げ出して
彷徨って
行き着いた島が…翔太。
そこで息継ぎをして、
なんとか学校に来れるようになって
学校でやっていくために、
俺からは距離を置こうと思ったのだろう。
当たり前だ。
そして、俺はそんな七瀬に詰め寄って
また、馬鹿やった。
《ななせゆうきが女の子だったら
どうしたかった?》
《…ただ、会いたかった》
違うだろ。
俺は元々、自分のものにしたかったんだ
七瀬夕紀
その名前を見つけた日から、
手に入れようと決めていて
《伊織のものでしょ?》
自分のものだと決めていて
《これ、伊織にあげる》
翔太なんかに手を出させないと決めていて
「元々、あいつの気持ちなんか考えてなかったから」
《離せ》
七瀬の、拒絶。
「…頑張ったんだな」
嫌だ、なんて言うことほど、怖いことはないだろうに。
でも、俺との関係を切ろうと思えるくらい、強くなって、安心を知ったということだ。
翔太の元で。
「あいつはもう大丈夫、らしい」
三刀屋が真顔で口を開いた。
「じゃあ諦めろや」
「七瀬がお前なしでも幸せなんだったら」
「お前が身を引けばいい話じゃん」
「女々しいこと言ってんなや」
平手打ちされたみたいだった。
…諦める、か
何故、考えなかったんだ
ただ、どうすれば七瀬が手に入るか、
それだけ考えてた
俺無しで、あいつが幸せなら…
《 俺のこと、大好きだって 》
翔太が、あいつの求める人間なら
「なーんつって」
三刀屋がとぼけた顔で言った。
「お前、絶対諦めたら後悔するって。
今我慢したら、多分後で爆発して、
七瀬のこと本当にぶっ壊しそうやん」