触って、七瀬。ー青い冬ー
第12章 赤糸の行方
「どうせ何度も傷つけたんだろ?
だったら、お返しに傷つけて貰えばいい」
三刀屋は、震えながらまた続けた。
「それに、抑えてる高梨とか怖いから。
鳥肌立つわ」
さっきの、欲情した高梨の目、声、全てを思い出すと、体がすくむ。
まるでライオンの前のシマウマのような、
圧倒的弱者の絶望感。
あの野生的で爆発的な欲求が、
高梨の中で常に蓄積されていくなんて、
考えるだけで恐ろしい。
七瀬も、とんでもない奴に好かれてしまったなぁ。
「お互い、きっちり片付けたらいい。
そんでまた、初めから
友達からやり直せばいい」
全く、馬鹿みたいに整った顔した二人が、
馬鹿みたいに好きだの嫌いだの。
ちょっとはその顔と女子の人気分けろや。
俺の方が有効活用する自信あるわ。
「…ありがと、みとやん」
高梨が俺の肩を叩いた。
「おう」
馬鹿みたいにデカイし。
「早くいけや」
木村千佐都さえ眼中にないってか。
「なんか急に冷たいじゃん」
「…クソ野郎」
「えー」
………
ピンポーン
…返事がない
ピンポーン
「翔太さん?」
呼んでも、いない。
仕方ない。
合鍵で扉を開ける。
まっさらな、空っぽのベッドに顔を埋めた。
安心する、翔太さんの香り。
《…こういうつもり》
「どういうつもりだよ、馬鹿」
僕の学校生活の未来を潰しておいて。
木村千佐都という彼女がいるくせに
僕のことを罠にかけて遊んでる
…木村千佐都は、何も言わないのか?
もしかして、僕は彼女含む全校生徒公認の遊び相手か!?
「…馬鹿馬鹿しい」
高梨がキスまでするなんて、考えもしなかった。