触って、七瀬。ー青い冬ー
第12章 赤糸の行方
コンコン、と扉がノックされる。
「到着したようです」
男は少女にひざまづいていった。
「入って」
男が扉を開けると、立花薫が立っていた。
ひとりの少年を抱えて。
「…ようやく見つけました」
少女は大きな椅子から立ち上がって、
抱えられている少年の赤い頬を手のひらでそっと触れた。
「ん…」
はっ、と少女は手を離した。
「大丈夫ですよ。
まだ薬が効き始めたばかりですから」
立花薫は、別人のような口調で言った。
「…そう」
少女は、少年の眼鏡をそっと外した。
「…全然、変わってない」
少女はそう言って、少し目を潤ませた。
「…ごめんね」
少女はそれだけ言って、一筋だけ涙を流した。
「もう、行って」
「ですが、このままだとこいつは…」
立花が言うと、少女は背を向けた。
「いいの。私が何を言おうと、最後に決めるのはお母様なんだから」
少女は人差し指に嵌めた黒い石の指輪に触れた。薔薇の香りが部屋を包んでいた。
立花はまた、別人のように答えた。
「わかりました。それでは」
部屋を出て扉を閉めると、立花の腕の中の七瀬夕紀は熱を出したように熱い息を吐いた。
「…上」
立花薫はそう言って、ひひひと笑った。
……
「んっ…」
熱い。
今日は雪が降るって聞いていたのに、
どうしてこんなに身体が暑いんだろう。
目はまだきちんと開けられない。
…風邪をひいたみたいだ。
「は…」
汗でベタつくシャツを脱ごうとした時、
腕が何かに捕らえられていることに気づいた。
「んっ、ん?」
ジャリ…?
この体勢に覚えがあった。
僕は、逃げられない。
「…坊ちゃん」
ふっ、と冷たい息が耳にかかった。
「っあ…!」
びくっ、と肩が跳ねた。
背中の中を、悪寒が走る。
「はぁっ、はっ…」
ジャリ、と鎖の音がした。
僕の両腕は、その鎖につながれていた、
ひっひ、という笑い声がする。
「いい反応」
立花はサングラスを外していた。
「今日は何回イってもらうかなぁ」
何故だ?
「は…は、ぁ…」
イく、という言葉を聞くと身体が震える。
身体がずっと熱かった。
「ほんじゃ」
立花の後ろに、3人の影があった。
まさか、この全員に…
「始めよか」