触って、七瀬。ー青い冬ー
第12章 赤糸の行方
「っ…、ふ…、んっ」
口を無理やり閉じて、
僕の声は聞こえなくなった。
身体は相変わらず、快感に震えていた、
上手く息ができない苦しさで涙が滲んできたが、それでも立花を睨みつけた。
僕は何も持っていないし、
何も隠してもいない。
こんなところに連行されるようなことをした覚えもない。
「…反抗期かい?坊ちゃん」
立花は僕の目を冷えた目でじっと見た。
目を見たまま、ずり、と手が強く擦り上げた。
「っは…、はぁっ」
僕はまだ、折れない。
滲む視界に立つ立花に視線で立ち向かった。
立花は、僕の先端にバイブを押し付けた。
「っひぁ、あ、あっ、あぁっうぅ」
立花の目を見たまま、僕は情けない声を漏らした。
立花はだらしなく口を開けて喘ぐ僕に、
低い声で言った。
「生意気な目をして、
そんなにここから逃げたいのか」
立花の本当の姿はどれだ。
そんな風に、別人のような口調に変わるのは何故だ。
「は、はぁ…ぁ」
低い声…
僕は忌まわしい人物を思い出していた。
こんな風に縛られて、自由を奪われたまま、ただ快感に震えていた夜。
僕だけが、
その行為の中に愛を探していた。
僕は馬鹿だった。
あの人は、もう友達ですらない、他人だ。
僕の恋心も知らないで、全校生徒の前でキスまでしてくれた。
死ねばいいのに。
こんなに好き…だったのに。
あんな奴とはもう、関わらない方が良い。
唯一の友達だったけど、唯一信じていた人だけど。
あんな風に僕の気持ちを踏みにじるなんて、酷すぎる。
「泣くほど逃げたいのか」
立花はバイブで僕の棒をつー、と撫で上げた。
「はぁ、はぁあっ」
嫌いだ、大嫌いだ。
…それなのになんで、僕はまだ思い出すんだ。
あの夜も、あのベッドも。
「それとも、泣くほど気持ちがいいか」
中が突かれる感覚も。
「自由にしてやろうか?」
あの甘い香り、甘いキスも
「頷けば、それでいいんだよ」
「はぁっ、あぁ、あ」
何に頷くって?
「俺達の家族になるんだ」
「簡単なことさ」
「君の本当の家族に会わせてあげよう」
本当の、家族…?