触って、七瀬。ー青い冬ー
第12章 赤糸の行方
「そのために、
君が少し協力すればいいのさ」
「ひぁっ、あ、あっうぁあっ」
家族だって?
本当の、って、
僕に別の家族がいたって言うのか
「ほら、頷いてみせて」
頷けば、会えるって?
僕を追い出したあの二人じゃない、
本当の家族に?
「あ、あっ」
立花はひひ、と笑った。
「そう」
頷けば…
「立花ぁあ!」
誰かの声がして、立花が僕から手を離して
僕は震える体をそのままにして、
目を閉じた。
あれ…
あぁ、これってやっぱり夢だったのか…
なんだか急に、瞼が重くなった。
*
扉を開けると、暗い部屋の中には、
やはり七瀬がいた。
…遅かった、だろうか
「あーあぁ」
立花は脱力して鎖にぶら下がっている七瀬を見て、ため息をついた。
「もうちょっとだったんやけどなぁ」
立花は振り向いて、振動している小さいものを床に放り投げた。
「…そいつに何した」
シャツもベルトも、ぐちゃぐちゃだ。
「ぜーんぶ黒王子のせいで台無しや」
俺の両腕は、いつのまにか数人の男に掴まれていた。
「七瀬を返さないつもりなら、
こっちにも手はある」
俺が言うと、立花は面倒そうに頷いた。
「返す返す。ほんじゃあ俺は帰るから、
後はお前らでよろしくなぁ」
「おい!立花ぁ!」
「年上には敬意を表そうな、黒王子」
立花が部屋を出て行ってしまった。
俺は数人に捕らえられたまま、
七瀬を見ていた。
「…で、こいつはどうすりゃいいの?」
「一緒に縛って置いとくか?」
「でも立花さんすごいテキトーだったし」
「ただの高校生だろ?」
「こいつ無駄にデカイけどな」
「まぁ、大した奴じゃないってことだろ」
俺は立花への怒りを溜め込んでいた。
「…あんたら、とりあえず殴らせろや」
………
「…ああ、無事だった」
「犯人?立花だよ。薫」
「多分、薬かなんか飲まされて…そう」
「今日はこっちで預かる。文句ないな」
「…」
七瀬が、ベッドに眠っている。
「はぁ…」
無事で良かった。
良かった、けど。