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触って、七瀬。ー青い冬ー

第13章 愛の嫉妬



七瀬は女子の手を取ろうとする。



「七瀬」



あ、今、声に出た


「…」


七瀬が立ち止まった。

しかし、俺の声など聞こえなかったかのように笑った。


「行こう」

2人は教室から出て行った。


シンと静まっていた教室は、
また騒がしくなった。
恐らく、あの2人のことしか話題に上らないだろう。


「…くぅー、あれはキツイね」

三刀屋が気の毒そうな顔で俺を見た。


「もう殺してくれ…」

「あそこまでガン無視されたら泣くよなぁ、高梨」

「勝手に泣いてろ」


「ちょっと高梨ぃ、慰めてんだよ?」


泣くどころじゃない。


俺は…死ぬ。



そうか、あいつがあの時…




《高梨がいなくなるのが…怖いんだ》


俺が無理やり部屋に上がり込んで、
何があったか問いただした時。


《帰っていいよ》


《僕は大丈夫だから》



七瀬の孤独。


今まで、分かったような気がしていた。

でも、全然わかってなかった。



お前がいなくなったら、死ぬ…
そんな気がする。


そんなのありえないと思うけど


でも、振り向きさえしなかった七瀬の姿は
本当に別人だった





「おはよう」


「…」

次の日も、その次の日も、
いつも通りの挨拶さえ返さない。



「七瀬」



七瀬は、気がついたら隣に女子を連れて歩くようになっていた。



「七…」



俺は、誰かをこんなに追いかけたことがあったかな

こんなに手を伸ばしたことがあったかな


振り向いてくれない誰かがいても、
俺には他の誰かがいたから、
追いかけるなんて
馬鹿なことはしなかった。


君がそうやって背を向けるたびに、
思い知る。


喉を縛り上げられたみたいに、
みぞおちを殴られたように


息苦しい。


君を縛ったあの布やネクタイが
俺の首や胸に絡みついて、
苦しい。





「やっぱり、嘘だったんだね」

「付き合ってるって噂?」

「だよね」

「でもキスまでするー?」

「ファンサービスでしょ」

「最近、仲悪いみたいだよ」

「七瀬君が避けてるみたい」

「高梨君、辛そうじゃない?」

「親友だったのにね」






俺が一番、馬鹿だ。



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