テキストサイズ

触って、七瀬。ー青い冬ー

第13章 愛の嫉妬



俺が隠しても、きっと見透かされている。


「なんで、全部…わかるんですか」


俺は、麗子さんに頭が上がらない。


「あの子、夕紀君。
伊織が自分の部屋に連れて行くなんて、
初めてだったじゃない?

あの子に心を開いてるんだなぁって
思ったの。

あの子が来るまでは、17階の自分の部屋に誰かを入れるなんて、絶対しなかったものね」


麗子さんは嬉しそうに言った。


「別に、特別な意味は」


「あら、そうなの?
あの子に鍵まで預けてたみたいだけど」


鍵、次の日の朝には返されてたな。


「…あいつ、帰る家がないって言うから」


麗子さんは、はぁ、とため息をついた。


「ほんと、素直じゃないのね。
それも癖って言うのかしら?」

「…」


麗子さんはふぅ、と息をついて、
俺に手を差し出した。


「これ、
ずっと渡そうと思ってたんだけど」


「…何ですか、これ」



その手には、白と黒の指輪があった。



「ペアリング。夕紀と伊織に」



麗子さんは、俺の手を取って、俺の手に乗せた。


「伊織のことだから、きっと素直な気持ち言えないまま喧嘩でもしてるだろうなぁと思って」

黒と白…
俺が黒で、あいつが白?

「だからって、こんなのしろって言うんですか」

七瀬は、俺と目さえ合わせないのに。


「嫌なら無理にとは言わないわよ?
渡さなくてもいい。
伊織の好きなようにすれば良いの。
あの子じゃなくて、他に渡したい子がいるなら、他でもいい。

でも、後悔だけはしてほしくないの」



あの夜も、あの夜も、あの夜も


あんなことしなきゃ、俺と七瀬はまだ、
友達だっただろうな…




「後悔なんて…しません」


「そう?」

麗子さんは笑って、去っていった。



こんな指輪渡されたって、
どうしようもないのに



………





「っは、はぁ、まっ…あ」



何が起こってる?




「っな、なせく…」



ああ、気持ち悪い。

やめてくれ



保健室に真山先生がいなくて、
僕はクラスの名前も覚えていない女子に
押し倒された。



「はぁっ、あ、おっき…い、
おっきぃよお、ななせくんの…」



抵抗すればいいじゃないか、
なんて馬鹿なことは言わないでほしい。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ