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触って、七瀬。ー青い冬ー

第13章 愛の嫉妬



「おーい、旦那ぁ?」


「立花さん、ナイフ…」


「あ」


青年が突きつけていたナイフは、男の股間に食い込んで、赤い液体に濡れていた。


「わーお、ジャストミート」


「そいつ去勢してどうすんですか」


「あはは、まぁ、死にゃしないやろ」


「あんた、マジで怖えよ」


「お前に言われたないわ…とりゃっ」


どさ、と泡を吹いた男をコンクリートの床に投げたつけた。


「俺なんか怖くもなんともないですよ、
あなたに比べたら」


警察官の格好をした男、佐藤は親指を立てた柄のルピー硬貨を天井に投げた。


「はっはぁ、顔写真見せただけで誰でも捕まえてくる奴がよく言うわなぁ」


「人脈と運だけが取り柄なんでね」


佐藤はルピー硬貨をキャッチした。

「で、旦那。本拠地はどこ」

「っ…い、言えません…」

男は涙ながらに言った。

「そこ切られても口を割らないってのは、
なかなか良い調教をされてきたみたいですね」

佐藤は立ち上がって、立花の横で床に転がっている男の様子を伺った。


「ま、うちの調教の方が何倍も気持ち良いけどなぁ」

「立花さん、やる気ですか?
こんな豚が泣いて喘いで、
誰得なんですか」

「俺だってやりたかぁないけどなぁ、
それがうちのボスの方針じゃ」


「はーあぁ、あの人の物好きもどうにかならないもんですかね」

佐藤が言って、血の滲む男の股間を踏みつけた。

「うううっ!」

男が喘ぐと、
ひゃひゃひゃと立花は腹を抱えて笑った。


「なぁに言っとんねん、
そのおかげでうちにはこんだけの組員がおんのや」

「そうでしたね。まぁ、良いくじに当たれば、見る方も楽しいし…」

「良いくじ、ってのは例の坊ちゃんか」

「ああ、確かに良いくじでしたね」


立花は床に転がる男の顎を踵の高い靴の先で撫でた。


「全く、罪な子やなぁ」


「あいつら何者なんですか?
七瀬夕紀と、あの黒王子。

黒王子の方はやたら背が高くて喧嘩も強かったみたいですし、あの部屋に侵入するのにはセキュリティーを突破しなくちゃいけないのに」

佐藤は、高梨伊織がいくつものロックされた扉を開け、組員を殴り倒していく様子を監視カメラで覗いていた。


「ただの高校生じゃないですよね」


佐藤が言うと、立花はふっと笑った、


「だから、黒王子なんだよ」



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