触って、七瀬。ー青い冬ー
第13章 愛の嫉妬
…つまり、僕が、そのHSPに当てはまるってことだと思う。
その時、高梨は僕が当てはまると言ったわけではなかったけど、僕にそういう特徴があったからその話をしたのだと思う。
「人の言動とか考え方には癖がある。
例えば、HSPは、常に相手を楽しませなきゃいけないし、好かれるために努力しなきゃいけないと思う傾向がある。
でも、それは意識してはいなくて、
自然にそういう考え方になってる」
「どういうこと?」
「箸を使うのと同じ感覚だ。
どんな風に箸を持って、指をどんな風に使うか、それをどう口に運ぶか。
最初に覚えたものがずっと体に染み付いて、慣れてしまったら無意識にその方法で箸を使うようになるし、直すのは難しい」
考え方に癖がある…
初めて気づいた。
「大事なのは、全部変えようとすることじゃない。生活に支障がでるような、おかしい癖は少しずつ矯正する必要があるかもしれない。
でも、ちょっとした癖なら誰にでもあるものだから、もし周りに少し手伝ってもらうことで楽にその癖と向き合えるなら、それがいい」
高梨は、なんでそんなことを知っていたんだろう。
僕は、いつも、自分とこの世界は合わないと思っていた。
いつも、サイズや、材質、肌触り、全てが自分に合わない服を着ているみたいな感覚だった。
気持ち悪くて、着ているのが苦痛で、
早く脱ぎ捨ててしまいたいけど、
裸じゃ生きていけないから、
なんとかその服に合わせようとしてきた。
でも実は、服が合わないんじゃなくて、
僕の肌や頭が、その服のちょっとしたほつれやずれを敏感に感じ取りすぎてしまっていただけなのかもしれない。
だから、たまに服を脱いで休んでみたり、
この服はそこまで悪いものじゃないと気づいたり、思い込んでいたことをなくしていったら、この服はもっと着心地が良くなるかもしれない。
…高梨は、なんでも見透かしているみたいだった。僕のことを、なんでも知っているみたいで、僕はたまに隠したくなる。
だから、きっと、僕の考え方の癖までわかってしまう。
「なんで、それを僕に話したの?」
少し不安げに聞いた。
高梨は、僕を横目に見て、口の端をあげて笑ってみせた。
「お前は、いろんなことに敏感だから」