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触って、七瀬。ー青い冬ー

第13章 愛の嫉妬




「…そう、かな」



なんで、そのたった一言でこんなに緊張して、動悸がしているんだろう。

僕は、その言葉を聞いて何も言えなくなってしまった。


高梨の視線や、瞬き一つに、僕は息を吸うのを忘れてしまう。


それも、僕がいろんなことに敏感に反応してしまうから、なのだろうか。


高梨は、縮こまったままの僕に、
綺麗な手を差し出した。


「ボール」


その時、その手の親指の爪の先が欠けているのに気がついた。









「その友達は、今は、もう話さないけど。
いつも、いろんなことに気づかせてくれました。その人の言葉で初めて知ったことは、数え切れないくらいです」


「そう」


翔太さんは、小さく返事をした。


「それで…

翔太さんとずっと一緒にいて、
僕は、気づかないふりをしなくちゃいけなくなりました。」


翔太さんは、僕から手を離した。


「翔太さんが、その友達に似てるって」



翔太さんが大好きだった。

優しくて、僕を慰めてくれる。


その目や、冷たい手は、
まるで、高梨伊織のようで


翔太さんの顔は、もう見られなかった。

翔太さんは、黙った僕に言った。



「でも、その友達は夕紀を無理やり犯したんじゃないの」


「…そう、です。だから、翔太さんに甘えたくなったんです」


「じゃあ、俺はそいつの代わり?」


…ひどすぎる。

やっぱり、翔太さんの言った通り、
僕は酷い。


僕は、弱いから、何も言うことができなかった。

翔太さんは、僕の答えを待っていたわけじゃないみたいだった。


「夕紀、電話ある?」


「…はい」


翔太さんは、僕のスマホを受け取った。


「そいつ、高梨伊織であってる?」

翔太さんは、僕のスマホを触りながら言った。母、父以外に登録してあるのは、高梨と翔太さんだけだった。

「そうです…けど、
電話するつもりですか」

「うん、夕紀がどれだけ傷ついたか、
俺が教えてあげる」

「そんな、やめてください」

僕が翔太さんから取り上げようとした時には、翔太さんはもう、通話のボタンを押していた。

「もしもし?俺だけど。今、夕紀といる」

二人は、どういう関係なんだ。

「絶対切んなよ」


翔太さんは一方的にそう高梨に言って、
スマホを伏せてベッドに置いた。

「夕紀、最後に、しようよ」

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