触って、七瀬。ー青い冬ー
第13章 愛の嫉妬
最後。
まただ。
「代わりでもいいから」
翔太さんは、聞こえないように
僕の耳に囁いた。
今すぐ、その通話を切りたい。
僕は、放置されているスマホに手を伸ばした。
「切るなら、やめる」
僕は、なんで、躊躇うんだろう。
「切って」
なんで?
「切っていいよ、夕紀」
なんで…
「好きなんでしょ?」
誰を?
あ…
やっぱり、その目は、似ていた。
「翔太さ…」
翔太さんは、僕に覆いかぶさった。
「夕紀?」
“ やっと気付いたのに ”
高梨が、僕を本気にしてくれなくても
翔太さんは…
「切らないの?」
僕はいつだって切ることができるのに、
固まって動けなかった。
「ひどいよ、夕紀」
翔太さんは、僕の唇に唇を近づけた。
「せっかく、
許してあげようと思ったのに」
許してなんか欲しくない。
僕を責めてほしい。
今まで、僕は、翔太さんを利用していただけだった。
翔太さんは、僕を好きじゃないんだから
愛なんかないんだから
もともと、お互いを利用するって話で
だから、翔太さんに誰を重ねようと
自由だなんて
「許さないでください」
もしかしたら、これは、僕に与えられた
最後のチャンスかもしれない
翔太さんが、僕に必要な相手なら
この先、翔太さんほど僕に合った相手が現れるなんて、想像もできない
僕は、翔太さんから離れて、自立したとして、一体どうするつもりだったんだろう
運命の女の子は全然現れないし
高梨の顔は見ていられないし
親なんていないようなものだし
でも、翔太さんはきっと、僕を見放したりしないから
僕は、今までも、この先もずっと、
一人なんだから
「最後…なんて嫌です」
翔太さんが、許さないでいてくれるなら
僕はまだ、悪い子でいられる。
良い子だね
なんて、言われなくていい
「本当に、ひどいね」
翔太さんは、僕にキスをした。
「…っふ、っ…」
翔太さんは、四つん這いになった僕の棒を優しく擦っていた。
「声、出して」
「っ…」
僕は、震えながら、息を止めた。
聞かれてるのに…