触って、七瀬。ー青い冬ー
第13章 愛の嫉妬
……
「伊織くぅーん!あーん」
「あー」
口を開けて、差し込まれるスプーンを咥える。
「かーわーいーいぃー!
もっとお酒入れちゃう〜!」
「本当?ありがと」
少し愛想よく笑うと、テーブルの女の子達はきゃあっと歓声を上げて喜んでくれる。
あいつも、こんな風に簡単に喜んでくれたら…。
そもそも、会話すら出来てないのに。
ぶー、とポケットの中が揺れた。
電話だろうか。
「ねぇ伊織君、もう一回
ステージやってくれない?」
誰だ、こんな時間に。
こっちは暇じゃない…
「うーん、そうだな。ギャラ次第」
「ひどーい」
ぶー、とまだ震えている。
しつこいな。
まさか、悪い知らせだろうか。
そっと画面を覗くと、《七瀬》の文字。
「伊織君、ねぇ伊織君!」
七瀬、見間違いじゃない。
「ご…めん、ちょっと休憩」
「えぇー、早く戻ってきてね」
「ああ」
あんたはどーでもいい。
早くこの電話に出ないと。
「なんか冷たーい、けどそれも好きぃー」
冷たくされて喜ぶなんて、物好きな奴。
店の裏の、
少し暗い静かな休憩所の扉の前。
ずっと震えていたスマホの画面を開いた。
「七…」
「もしもし、俺だけど」
被せるように言ったのは、期待していた、
素っ気ない声ではなかった。
この声は、あまりに親しみがあった。
「…翔太?」
「絶対切んなよ」
「何であんたが…」
がさっ、と布の擦れる音がして、相手の電話がどこかに放棄されたのがわかった。
少し離れた場所で、小さく話す声が聞こえる。なにを言っているのかよくわからない。
でもきっと、相手は七瀬だ。
「おい翔太!」
呼びかけても返事はない。
なにをするつもりだ。
「おい」
「あ…っふ…」
なんだ、この声は
ガサ、と音がして、話し声が近くなった。
「声出して」
翔太の声が、はっきりと聞こえる。
「んん…ちょ、と待っ…」
七瀬の声も、近くなった。
「あっ、ああっ」
「ほら、いいでしょ?ここ好き?」
「待っ…て、だめ…あぁっ、あ、は」
何を…聞かされてるんだ俺は
「気持ちいい?ほら、なんか出てきた」
「ちが…あ…あ」
「ほら、とろとろ」
「うぅ…や、だ」