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触って、七瀬。ー青い冬ー

第14章 神の告白



僕はまだ、信じられない。

神、人、自分、世界。



きっと僕が見ているこの世界は、
僕の頭の中にある空想の国のように、
存在しないものだ。

全て、僕が見ている幻覚だ。


親も、すれ違う人も、
空も、月も、
幻覚だ。

全ては、僕の空想だ。


それなら、現実は何だろう。


それはきっと、真っ白な雲の上だ。


だから、僕の人生も、思い通りになる。

なぜなら、全部空想だから。


だから、僕は、思い通りにならないことに直面すると、激しい不安に襲われる。


おかしい、こんなはずじゃなかった、
なぜ、この人の言動と心情が一致しない?

僕のハッピーエンドは、
どうすれば完成する?


空想じゃなかった。

僕は、思い通りにならない世界に生きていた。

僕は、苦しくても、バッドエンドでも、
この物語を終わらせなくちゃいけない。

どれだけ暗い、重い物語でも、
命がある限り、終わりまで続けなくてはいけない。

人生は、拷問だった。




僕は、月を見て願った。

死にたくない。
老いたくない。


ある朝、
僕は明るくなった窓を見て願った。

死にたい。
消えたい。



僕は死ななかった。
消えなかった。

僕は年を重ねた。


息をしているのが、とても辛かった。

息を止めているのも、とても苦しかった。

じゃあ、僕はどうすれば楽になるんだ。

涙を流すのも、とても疲れた。

手首を切るのは、とても怖かった。

夜、眠らないのは、とても楽だった。

朝、起きるのは、地獄のようだった。


明日が来ませんように。




朝が来ませんように。





でも、朝は毎日やってきた。










「…はぁ…」


息は、真っ白な空に上っていった。

雪が降っていた。




ぶー、とコートのポケットが揺れた。



【 本当にごめんなさい。
雪で電車が止まって、行けなくなってしまいました。】


【すみません、俺も】


【私も】


【じゃあ、今日はやめようか】





「…なんだ」



結構、張り切って来たのに。



僕は、必死にクリスマスツリーになろうとしている大きな木の前に立ちつくしていた。










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