触って、七瀬。ー青い冬ー
第14章 神の告白
…
「ご注文はお決まりですか?」
僕と彼は窓際のカウンター席に並んで座った。
店内にはまばらに客が座っていて
窓からはあの大きいクリスマスツリーと、
それを飾り付けるような雪が降っていた。
彼はメニューを見もせずに言った。
「アイスコーヒーひとつ」
「はい」
こんな寒い中、どうしてアイスコーヒーなんだろう。
僕はメニューを眺めていた。
「えーと…」
店員は頭に赤いサンタの帽子を被っていた。
…クリスマス、なんだよなぁ
なんだかそんな気が全くしないけど。
メニューはクリスマス仕様で、ケーキやらパフェやら色々な季節物が出ていた。
子供の頃ならこんなケーキに見惚れていたな。
高校生になって割と自由にお金を使えるようになった今じゃ、何の興味もわかないなんて悲しいものだ。
「すみません、温かいお茶って出してもらえますか?」
僕はメニューを閉じて聞いた。
「はい、大丈夫ですよ」
「じゃあ、それで」
「かしこまりました」
店員が下がろうとした時、彼は店員を呼び止めた。
「あの、すみません。
やっぱりこれも、追加で」
彼が手袋をしたままの手で指差したのは、大人向けのビターチョコでコーティングされた小さめのケーキだった。
「はい、追加ですね。かしこまりました。少々お待ちください」
彼は、まだマスクと眼鏡をしたままだった。眼鏡が外との温度差と、マスクから流れる息で少し曇っていた。
「なんで、アイスコーヒーなんですか?
こんなに寒いのに」
窓の外には歩く恋人たち。
金色に光るイルミネーション。
焦げ茶色のカウンターに真っ黒な椅子。
照明がうす暗い落ち着いた店内。
僕と彼の間にひっそりと置かれている、
優しいキャンドル。
「…なんでと聞かれるとわからないですけど、冷たくないと飲んだ気がしなくて。
分かります?」
「…いえ」
「はは、ですよね」
この人変わってるな。
「俺も自分は変だと思います」
「僕もですよ」
すぐに、飲み物、ケーキなどが届いた。
「すみません、もう15分経っちゃいましたね。これからが本題だったのに」
彼は、飲み物やケーキに手をつけていなかった。
「本題?」
僕はあたたかいお茶を飲んだ。