触って、七瀬。ー青い冬ー
第14章 神の告白
精神的に向上心のない奴は馬鹿だ、
そう言いたいのだろうか?
「本当に…悪かった」
それなら、人間はみんな馬鹿だよ。
だって僕らはみんな、
愛で生まれ、愛で生きているんだから
馬鹿は僕も同じだ。
でも、僕は自殺なんかしない。
それで誰かが傷つき、人生は真っ暗だと思ってしまうなら。
君を絶望に陥れたりはしない。
君から希望を奪ったりしない。
希望も愛も僕の命をかけて否定するなんて、そんな酷いことはしない。
僕はその点で言えば、賢明だ。
「高梨は悪くないよ」
高梨は、俯いていた。
「僕も馬鹿だからさ、言いたいこと言えないんだよね。
そのせいで余計に苦しんできたけど、まぁ、それが僕の生き方なんだと思う。
これからは言いたいことは言うように頑張るけど、そう上手くはいかないと思う。
だから、これは最初の一歩。
僕のはじめの一歩」
僕は震えている高梨の手を握った。
「僕は話しかけてもらって嬉しかった。
ピアノを一緒に弾けて楽しかった。
僕の淹れたお茶を美味しいって言ってくれて照れくさかった。
友達って呼んでくれてびっくりした。
才能があるって言ってくれたのも。
全部覚えてる。
人生で初めて親友って呼べる人だよ。
高梨と同じクラスで、隣の席で、
一緒に過ごせて楽しかったよ。
楽しかった。
懐かしい。
僕は多分、しばらく会えなくなるから、
ちょっと寂しいよ。
高梨を避けてたのは、その方が高梨にとっては良いと思ったから」
嘘だけど。
「高梨には彼女もいるし、
僕よりも優先するべき人がいるから。
僕もそういう人を見つけるべきだと思ったから。
でも、高梨はまだ友達で、大事な親友であることに変わりはないから。
高梨のせいじゃないよ。
僕の方こそごめん。
色々と、本当に色々迷惑かけたけど
楽しかった。
ありがとう」
僕は笑えていた。
妊娠したって…
どうすればいいのか分からないけど、
多分僕はすごく責められるだろうな。
人生、終わったかもしれないな。
まあ、元々失うものなんてないから。
家を追い出されていてよかった。
親戚とも関わっていなくて良かった。
「じゃあ、またね。メリークリスマス」
僕は高梨の手を離した。