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触って、七瀬。ー青い冬ー

第15章 指先の快楽



「言ってた?」

「えっ、まさか見てなかったの?ありえな〜!」


言ってた。
でもそれは僕に対してだ。

君じゃない。










「…伊織」


ため息が重たく地面に落ちていった。
肩も昨日の試合で疲れていて、少し痛んだ。

背中からするうざったい足音も高い声も、
嫌という程聞いてきた。


「ねぇ、待って」


俺はようやく足を止めた。
振り返って、細くて長い足を見せびらかすようなスカートに目を向けた。

もちろんその白い肌や腿の柔らかそうな様子にいつも想像を掻き立てられていたことを否定はしない。

しかし、その体についている顔がどうしても想像の邪魔をして、股間の膨らみもあっけなくしょげてしまう。

俺は普通にこいつと恋愛出来ていたら、
こんな風に苦しまなかったのだろうか…



「何だよ」

自分の威圧的な声に驚いた。
こんなにこいつを嫌いになってたなんて。

「何って、忘れてるんじゃないかと思って」

そして目の前の相手は、開き直っていたようだった。


「…」


頭の中には、白い肌があった。


しわひとつないワイシャツ、それに申し訳程度に引っかかっているネクタイ、細いが筋肉のある腰回りを締め付けるベルトと、首筋に赤い花。

叩かれて恨めしそうに眉を歪めてこちらを睨む目は、最近反抗心をむき出しにしている。



マゾヒストだからといって縛って叩いて泣かせておけばいいと言うものではない、とでも言いたげだ。


そんなことは重々承知。



その上で、縛って叩いているのだ、



無慈悲に、嫌というほど。




「誰にも言ってないだろうな」



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