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触って、七瀬。ー青い冬ー

第15章 指先の快楽





男だから、女だから。



「お前は俺をなんだと思ってる」

俺は男だ。だから力がある。
この女がどれだけ俺を脅そうが、それは口だけの弱いもの。俺にはその口を2度と開かなくさせることだってできる。今までも何度か、そうしてきた。

白と赤の、血にまみれた美しい戦いだ。


「なんだと思ってるって?」

つん、と千佐都は顔を背けた。


「ただのディルド代わりか?
精子バンク代わりか?」


ぶっ、と千佐都が噴き出した。


「あんたそれ本気で言ってる?伊織」

「あ?」


眉をひそめた時、視界が逆転した。
肩から地面に落ちるように、くるりと舞った。

ズダン、と背中は固いコンクリートの床にぶつかった。

「いった…!」

目の前に、カッター。


「伊織、私あんたのこと好きだって言ったの、
覚えてる?それとも私の言ったことなんてもう、何にも聞いてなかった?…それでも構わないけど。
あんたがこっちに入ってきて私に会って、
久しぶりに顔見たなと思ったら、あんた私を押し倒して犯した。処女だった、初めてだった。
それでなんて言った?痛がってるのが良いとか、
しまいには処女じゃなくなった私には興味ない?
もう要らないって」

カッターの刃は、俺の喉元に向けられた。

あれ、なんで俺がねじ伏せられてんだ?


「私のことなんだと思ってるの?」


「私はあんたのオナホじゃないの。
今まではそれでいいって思ってたし
体だけでも繋がってればいいって思ってた。
でも違うんじゃないかなって、
それじゃ私はもう満足しないってわかった」

つ、と刃が肌に触れた。


「だけど伊織は私のことを好きにはならないってわかってるし。七瀬夕紀が大好きで、私のことなんかなんとも思ってない。たぶんいずれオナホにすらなれなくて、ほかの女がまた出てくる。私より若くて可愛くて綺麗で、心も伊織に従順な子。

ねぇ、どうしてこうなったのかよく考えてみたら?
七瀬夕紀の未来が真っ暗になりそうなのは誰のせいなの?」


「俺のせいだって?」


そう答えようとした時、
喉にぐり、と刃がのめり込んだ。


「バイバイ、伊織」









「お悔やみ申し上げます」




「まだ若かったのに…」


「本当にねぇ、まだまだ子供なのに」




「どうして、あんなにいい子が…」











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