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触って、七瀬。ー青い冬ー

第16章 薔薇戦争




母が僕を叱るたび、死にたくなった

何歳になっても変わらず

どんな些細なことでも彼女が僕に怒る度

死にたくなった





【本当にあなたは…】



彼女自身、感情の起伏が激しいわけではないが
突然気を荒げるので
僕には成すすべなく縮こまって
それが収まるのを待つしかない


彼女だって人間だ

常に、子供に非があるわけではない

親は、大きくなった子供に過ぎない

それでも、親は絶対優位
子供は逆らえず、常に奴隷だ


親が言うことは絶対。



脳にそうプログラミングされているのだから



だから、どれだけ僕が努力しようが
どれだけ彼女のために身を削ろうが
彼女の期待に応えようとしようが

関係ない


全ての裁判権は親にある


親が有罪とするなら、それを受け入れるしかない










僕は年明けから高梨の部屋に居候していた。

お互いの気持ちが分かって、それで


でも、何も解決してなくて



【妊娠したらしい】



何も、解決…できない



【本当に、あなたは…】


がっかりした親の顔…
なんで、まだこんな風に思い出してしまうんだ

もうあの二人は両親じゃないのに


高梨の部屋は広くて、お洒落で
僕にはもったいない


持て余す

時間もスペースも



まだ噂になってはいないようだけど、
高梨との噂とか
最近は女子の視線が妙に怖く感じて
男子はやたらと話しかけにくるし

それが良いことなのか悪いことなのかわからない

唯一わかるのは人の見る目が変わってしまって
どうやって接すればいいかもっとわからなくなったってこと

もしかすると、みんな面白がって
噂のタネとしてしか僕を見てないんじゃないか
なんて考えてしまって
人が信じられなくて

木村千佐都がこんなことを計画していたとか
彼女からお金をもらっただけで妊娠まで許してしまうクラスメートがいるとか

そんなことで人が信じられなくなって

人の悪意にここまで直にさらされたのが
とても怖くて

学校にも行けなくて



【夕紀】

この声は誰の声?


【夕紀君】

…先生?

いや、もしかすると…翔太さんかも





【七瀬】




びく、と体が震えた



僕に向けられた獣のような黒くて鋭い目

蝕まれる心と身体

赤く染まっていく肌


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