触って、七瀬。ー青い冬ー
第16章 薔薇戦争
理不尽だ
生まれてきたのは僕の意志じゃないのに
それなのに、勝手に僕をここに連れてきて
いざ、言われるがままにこの世界で生きてみたら
とんでもない落ちこぼれに出来上がって
こんなつもりじゃなかったなんて言われて
僕は一体どうしたらいいんだろう
誰からも必要とされない、愛されないまま
自分のことは自分が一番嫌いだ
だから誰から愛されようとそれを素直に信じられない
どうせ愛なんていつか廃れる
恋も
全部信じられない
全てを疑い始めたら
息苦しくて辛くなった
人というものが恐ろしくて
その表情の隅々までが嘘の仮面に見えて
本心のありかを探そうとして見つからなくて
一層信じられなくなっていって
それでも
楽になりたいから
疑うのは疲れたから
信じてみたくて
なんでもいい
なんでもいいから
誰でもいいから
……
チャリン、チリーン
「っ…いった…」
ガヤガヤ
ザーッ
チャリンチャリン
「ほお、いい色だね」
やけに騒がしい
さっきまで…
「そうでしょう、こいつぁ若いよ」
「うん、買おう」
ん?なんで、リムジンに座ってないんだ
床が固いし、なんか肌寒…
「30万だ」
「はい30ー」
ん…
周りに人が沢山いる
「いや70万!!」
ザーッ、というのは雨の音だった
でも目の前は真っ暗。
ただ自分にだけは光が当たっている。
「はい出ました70、お次は?
これが最高値か?」
暗闇の中でチカチカと光った炎が言った
「…よし、100だ」
ザワザワ
「よしきた100!お目が高い!
これで決まりか!
さあ、皆さん、本日の最高級品ですよ〜、
これを逃したら次はない!さらに、
100を越えた方には特別なお、ま、け、付き!」
しん、と静まった会場。
「…それでは、54番様の100万で…」
チカ、と炎が上がり、0の札が上がった。
そこから声が上がる。
「200」