触って、七瀬。ー青い冬ー
第16章 薔薇戦争
怖かった…
そうか
僕は怖かったのか
「私は君に同じことをしてしまった人間として、
君にいくら謝っても足りないのはわかっているが…
謝りたい。そして、私は君に残った心と体の傷を癒すように、できるだけ努力をしたい。
君と離れる事が、君のその傷を癒せるのかもしれないと思ったから君から離れた。
でも」
これは本心か、それともただの言い訳か…
「君自身がその傷を克服するために行動することも
必要なのではないかと、そう思った」
「僕、自身が…?」
嫌だ、触れたくない傷をわざわざ…
「君はこのままだと、また誰かに同じことを繰り返される」
先生は僕の濡れているシャツの襟に指をかけた。
首に触れた懐かしい指。
美しい、憧れの手。
「知っているかい?
君はあの劇場のステージで、数百人の前で見世物にされていたんだよ」
劇場…?あの、暗い地下のことか
「男女関わりなく、年齢すら確認せず、
好みの人間の体を金で買おうとしている連中が
君の体を眺めて値踏みしていたんだ」
「っ…」
身震いした
先生の手が僕のシャツのボタンを一つ外した。
「私の周りにいた人間は涎を垂らして君を見ていたよ。余程君の体が気に入ったらしかった。
あの場で君が誰かに連れ去られてそこらの道端でめちゃくちゃに、好き勝手にされてもおかしくなかったんじゃないか。奴らは容赦がない。
君が泣こうが喚こうが地面に押さえつけて力づくで
慣らしもせずに何でもかんでも突っ込むだろうね」
先生は僕の肩を強く押さえた。
「抵抗できるかい?もし君が暴れたら、
奴らは君を黙らせようとする」
先生の手を押し退けようとしても、動かない。
むしろ、もっと力が強くなった。
「なんで…なんで、僕が」
「どうやって黙らせる?
口に何か突っ込むか、抑えるか…
それならまだ優しい方だろう。
君は、そうなった時にも抵抗できるくらいに強くならなければいけない。
自分のことを守れるのは自分だけだ」
先生は、僕にまたがったまま腰を少し前にずらした。
「っは…」
先生のジーンズ越しの臀部が僕の股間を擦った。
僕はその感覚に息を漏らした
「だめじゃないか、そんな風に力を抜いては。
抵抗しなさい」
先生はしつけをするように僕の目を見て言った。