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触って、七瀬。ー青い冬ー

第17章 My Man





高校3年生




【好きです】



心の中で何度も練習した言葉。
それ以上もそれ以下もない

付き合ってほしいとか、そんなこと…


私はいつも誰かを目で追っていた

それはクラスの人気者の男子
学年で一番かっこいい

見た目だけで好きになる、そんな年頃


ただ、私はいつも見ているだけ

彼は私に話しかけるとかしない

私はまるで空気

彼だけじゃなくクラスの中で私はまるで空気


いじめも何もない、ただ

空気




鏡の中を見た


私の顔


可愛くは、ない

でも

不細工でも、ない…はず



それなのに私は、いつも空気


私の性格なのか、それとも周りと合わないだけか



私はきっとなにかがみんなより劣っている

そんな気がしてならない



そんな私も、やっぱり青春を楽しみたかった

みんなみたいにキラキラしてみたかった




ずっと目で追っていた彼

誰よりも好きな気持ちは強かった

だから

卒業する前に、彼と離れる前に

気持ちだけでも吐き出しておきたくて




“ 好きです ”




馬鹿だった

なんでそんなこと言ったのかな



“ ありがとう ”



彼はそれだけ言って手を振って帰っていった


その時までは良かった


だけどその後、クラスでは


あり得ないよね

どういうつもりだったんだろうな

あの顔で釣り合うわけないのに

勇気あるよね

だってあの顔だよ…





私は、自分が思っていたよりも見た目が良くなかったみたいだった

今更気がついた



小さい頃から、両親に可愛がられて

可愛い

そう言われてきて


特に他人から見た目を褒められることはなかった


けれど、


どこかで思い込んでいた



【 私は可愛い 】



でも違った

可愛くない


不細工だ


私は




少なくとも、彼と比べて

可哀想

と言われてしまうくらいには




その彼も、やはり内心私のことを可哀想だと思っていたらしい



顔じゃない、って言うけど

やっぱり顔なんだ



【 俺さー、別に顔で選んではないけど
自分の中で最低限のラインってか
受け入れられる基準があるから
単純にあの子は無理かなって 】






つまり私は、不合格



可愛く生まれたかった






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