触って、七瀬。ー青い冬ー
第17章 My Man
「だから、この期に及んでやめるってどういうことよ?あんたって本当に馬鹿ね」
馬鹿、を連発している。この子は何をそんなに怒っているのだろう…
「へぇ、そう。やめたければやめなさいよ。
私はあんたのせいで計画を台無しにされたから
それ相応の罰はあんたに与える権利があるの。
覚悟はしておきなさい」
とても物騒な会話だ…
一体どんな計画?
さっきまで気分はどん底だったのに
好奇心が止まらない。
「…今?伊織がいる病院。何、文句あるの?
ただのお見舞いよ」
イオリ…
って、高梨伊織!?
一体何を彼にしたんですか!
と問い詰めるほど親しいわけじゃないし
相手は高校生でただの患者だ。
「罰を受けるのが嫌なら私の言うことを聞いてればいいのよ。いい?あんたは私に借りがあるってこと忘れないで。じゃあ」
私はそのまま彼女が出ていくのを待って、盗み聞きしていたのを気づかれないように個室を出た。
廊下を探すと、彼女がちょうど高梨伊織の病室へ向かうところだった。
どうしよう、私には無関係だけどどうしても気になる。あの子が何者で高梨伊織とどんなかんけいなのか。
私はそのまま後を追った。
涙の跡を拭うのも忘れていた。
「お邪魔します」
彼女は一言言って部屋に入った。
顔はよく見えない。
しかし制服を着ているのでおそらく同級生なのだろう。
私は部屋の外で聞き耳を立てた。
高梨伊織はナースコールを乱用するとか、
やたら面会者が多いとかで個室に移されていた。
「よく来たな」
高梨伊織は言った。
でも友達に言うにしてはそっけない口調だった。
彼女かとも思ったがそうも思えないし、
面会に来る時期が初めてにしては遅い。
「どう言う意味?
当の加害者が面会によく来たなってこと?」
彼女はとても気が強いようだ。
高梨伊織を相手にしてあんな風に挑発的に話す面会者は初めて見た。
…って、加害者って何ですか!?
「お前は何でここにいるんだよ。
これもカモフラージュか」
高梨伊織の方も、いつもとは様子が違う。
社交的で誰とでも打ち解けるタイプの彼が、
今は警戒心を見せている。
「何言ってるの?伊織が言えば私はすぐにでも退学になって捕まるのに、伊織が私を庇ったりするから私はのうのうと生きてるのよ」
首の怪我のことだろうか。