触って、七瀬。ー青い冬ー
第17章 My Man
すり、と裏側を擦る指
「っ…唯一求めていたのは…」
肩によりかかる高梨の重み
優しく、包み込むような大きな手
いつになく平坦で抑揚のない機械的な声
「本心を、伝えること…」
いつ終わるのか分からない緊張
ゆっくりと滑る意地の悪い指先
断続的な刺激、快感
「よし、そこまで」
はぁ、と一気に力が抜けて教科書を机に置いた。
「えー、では今まで読んでもらった場面ではー」
教室の集中が先生に戻った時、
僕は高梨の手首を黙って掴んだ。
ぴく、とその手が動きを止めた。
「…」
高梨は寝たふりをしたまま僕に寄りかかっていた。
「いい加減にしろよ高梨」
声にもならないその言葉は十分届いたはずだ
しかし高梨は寄りかかったまま目も開けない。
代わりに僕の手を振りほどいて机の上に手を出すと
長い人差し指と中指を立てて僕によく見せた
その先を見ると粘り気のある透明な液が光っていた
高梨は僕の耳元で囁いた
“ 変態 ”
怒りも悔しさも憎悪も感じた
それと同時に
高梨の心臓を揉みしだくような低い声も
芸術的ですらあるその指も
見れば見るほど虜になる
高梨はその指先を舐めた
その瞬間に体を鞭打たれたような
そんな痛みに似た刺激を感じた
なぜこんな辱めを受けながら僕はまた
快感を覚えているのだろう