触って、七瀬。ー青い冬ー
第3章 男子高校生の性事情
『いつまで猫かぶってるつもりだよ』
香田の冷たい手がシャツのボタンを外した。その手が鎖骨の間からみぞおちまでをなぞった。
『…』
僕は香田の取り巻きに羽交い締めにされていて動けない。
それでも香田に好き勝手されるのが嫌で顔を背けた。
香田の指は肌に触れるか触れないか、ぎりぎりのところを滑った。それはもどかしくてむず痒くて、産毛が立つような感覚だった。
香田の手は敏感なところには触れようとしない。触れられても鈍くしか感じない、むず痒いところしか触らない。
香田は気づいていたはずだ。
僕の乳首は腫れ上がっていた。
それでもその二つの突起には決して触れない。
その周りを、挑発するように、膨らみをさらに大きくさせるように往復する。
『は…』
僕は耐えきれなくて息を漏らした。
香田を喜ばせるとわかっていても、
我慢できなかった。
『気持ちいいなぁ?七瀬』
香田がまた耳元で言った。
『はぁっ』
耳から入る声は、僕を無条件に震えさせる。この忌まわしい声でさえも。
『早く触ってほしいなぁ?』
香田の指が、胸の突起の周りで肌を引っ掻く。
『黙れ、っ…』
『嫌ならやめてやる。言えよ』
香田は既に僕の弱点を知り尽くしているようだった。今までの苦痛を与えるだけの嫌がらせよりもタチが悪い。
香田の息が耳にかかる。
『やめて欲しいんだろ?七瀬』
『んっ、んんっ』
背中に電気が走る。
顔を背けても、耳を無防備にしているだけだった。
『それとも触って欲しくてたまらないか』
『あぁ…あ』
『言えよ』
目の前が見えない。涙で霞んでいるのか、
頭が視界を処理しきれていないのかわからない。ただ、僕は慣れきっている筈の快楽が欲しかった。
どんなにいらないと思っていても、こんな風に焦らされると、人は手を伸ばしてしまう。
『…欲…しい』
僕はもう何も考えていなかった。
香田が満足げに笑った。
『おねだりはきちんとしないといけないよ、七瀬くん』
『触って…早く…』
『お前の負けだ』
香田が僕の勃起した乳首を摘んだ。
『あああっ』
背中が弓のように反った。
焦らされていた突起はさらに赤く腫れ上がって、その刺激に喜んでいた。
乾いた喉を潤していくように、僕に甘い快感をそそぎこんだ。
『あぁっ嫌だ、あぁ』
『嫌じゃないだろ?』