触って、七瀬。ー青い冬ー
第17章 My Man
ひやりと冷たいその指に、身震いすらできずに固まった。
「心配した立花の命令で俺は、迷い子になったガキを探しに走る。そりゃあもう大変だ。奴らはすばしっこくてずる賢い。ガキに見えても知能だけは高かったりするからな」
僕の耳たぶには、穴が開いていた。
「どうしても見つからない時、このコインを投げて行く場所を決めるんだ。
大抵、これは正解をくれる」
そのコインには指を一つ立てた手が刻まれていた。
「そして見つかった迷い子達はまたウチに帰る。
そうすれば奴らは毎晩寝床を探すまでもなく、
逆に金をもらって寝床を借りる。
無一文で行き場もないあいつらにはこれ以上ない待遇だろ?なぁ」
「子供は金稼ぎの道具じゃない」
「ああ、そうらしいな。でもあいつらはウチがなきゃ生きて行くすべがない。みんながお前みたいに扶養してくれるお友達をもってるわけじゃない。
そうだろ?」
「だからって、逃げ出した子供達を捕まえてまでそうさせるのは間違ってる。
そもそも体を売るなんて…」
「間違ってるから何だ?
ああ、俺達は全員犯罪者だ。
間違った事だけを頼りにして生きてる、
人間のクズの集まりだ。
だがな、俺達も好きでこうなったんじゃねえ。
お前みたいに恵まれなかったから、
金も顔も性格も能も、何も恵まれなかったから
こうやって拾われて体売って
必死に生きてきたんだよ
それを間違ってるだのなんだの
正義感さらして満足したいだけのお前みたいな、
お前みたいな薄っぺらい人間が否定する
俺らの生き方を否定する」
その言葉の全ては冷めた鉄のような無表情な顔から、口から発せられた
その後ろに立つ柄の悪い男達も皆
冷たい目で僕を見下ろしている
彼らも佐藤も
耳たぶにピアスをしている
僕と同じように開けられた穴を塞いでいる
間違ったのは一体、誰だ
「連れてくぞ」
「はい」
思考が絡まったまま解けない
体は掴み上げられて浮き上がった
きっとまたあの劇場に戻るのだ
それかまた立花に遊ばれる
また
「おいおっさん」
「あ?」
ざ、ざ
その足音に嫌な予感がした
「そいつこっちのもんなんすけど、
そろそろ返してもらえます?」
数十人という輩相手に一人立ちはだかっていたのは
香田千尋、僕の大嫌いな人間だった。
「ああ?誰だこのガキ」