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触って、七瀬。ー青い冬ー

第18章 白の孤城


そこで思いついたのは、七瀬が何かの間違いで交際相手を妊娠させ責任を取らざるを得なくなり、高梨伊織とは別れるしかなくなるというシナリオだった。

そこで早速千佐都はクラスの七瀬のファンだという女子の一人に金を支払った上で七瀬との行為を頼み込み、妊娠したという嘘を流させようとした。

ところがその噂を聞いてやってきた香田千尋は木村千佐都の元へやってきた。


「木村千佐都って名前は俺の高校でも有名でさ、校内の噂に詳しいって聞いてたし生徒会長で情報が集まってるだろうと思って」

そしてそこで千佐都は香田が七瀬と高梨の知人であるということを知った。

「すんごく必至に聞いてくるし、よっぽど七瀬夕紀のことが心配なんだなぁと思ったわ。そこで思いついたのよね。こいつ使えるかもって!」


「自慢げに言うな」

千佐都は計画の真実を香田に明かした。

《分かった?でも、二人とも初体験だったみたいで今回はちゃんと妊娠には至らなかったみたいなの。
だから次こそは妊娠してもらうわ》

「もちろん本気で妊娠させようなんて思ってなかったわよ。でもこの嘘に香田が引っかかってくれたのよね」

すると、香田は2度目の行為をさせないようにしてほしいと頼みこんできた。

《噂だけならいい。俺もあいつら2人には別れてもらった方が…いや、とにかく!妊娠させるのはやめてくれ。七瀬の将来まで奪うのは…勘弁してくれ》


そこで千佐都は香田に妊娠させないことを承諾する代わりに条件を課した。

「で、その条件がその…」

七瀬は香田の格好を見た。

「ホストだよ。高梨の野郎が働いてるクラブに行って高梨の周辺を探ってほしいってさ」

「まあ、実際あんまり役には立たなかったわね。噂では七瀬夕紀もあそこに出入りしてるって聞いてたんだけどこのバカは見つけられなかったらしいし」

「おい!」

「…へぇ、そんなことが」

「ったくお前らのせいで俺の人生は終わったってのにお前らは。感謝くらいしてくれてもいいだろ。元々千佐都にそのつもりがなかったとはいえ、妊娠させないように俺が動いてやってたんだから」

香田が天を仰いだ。
七瀬は手首の重みに気がついた。

背中に縛られている手首を見ると、腕時計が付いていた。母親からもらった唯一のプレゼントだった。
大分傷が増えていた。


「この腕時計、なんであいつが持ってた?」

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