触って、七瀬。ー青い冬ー
第19章 夢色の雨
「媚薬…」
媚薬をいつ飲んだかもわからない。
けど、たしかに昨日も今日も桃屋が寝る前に部屋にいた。今日桃屋を呼んだのも、昨日寝る前に話を聴いてくれたから、である。
…が、まさかそんなものを飲まされていたとは
ていうか、飲んだ前後すら忘れるような薬ってどんだけ強力なんだ?こいつ馬鹿なのか?
殺す気なのか?
「この飴もそうですよ」
桃屋は口を開けた
舌の上にピンク色の飴玉
「あなたに飴と粉末タイプ、両方差し上げました」
「はあっ、はあ!?」
いや、それも頭おかしいけど
何であんた今それ自分で舐めてんだ!
「それでそのタカナシ様は一体どういうご関係ですか?」
「いや、あの…えー…」
どういうご関係なんだろう
多分、元、友達。
そして今、ただの知り合い。
ああ、言葉にするとなんて浅はかな関係なんだ
ていうか自分が未練ありまくりって感じで
普通に、ムカつく、腹立たしい、ウザい
「あんなの別に、ただの…ただの」
でも、《ただの元友達》を
夢の中に登場させてまでヤりたいとは
どうしたってそれは《ただの元友達》
とはいえないんじゃないだろうか…
…あ、本当にムカつく
死ね高梨
「…クラス、メイトで」
はあ、と言った後でため息が出た。
「…なるほど」
桃屋は飴を口の中で転がしながら聞いた。
じ、と目を見つめてくる。
…なんだし
「嘘をつきましたね?」
「いや、嘘なんか」
だってただのクラスメイト、という以外に
どういえば
「本当はあなたが今恋をしている相手、でしょう」
…なぜ、そうなる
「恋とかじゃないです。別に」
あー、こういう会話本当にウザいな
相手が桃屋であるから、なおさら。
「そうですか」
ガリ、と桃屋が飴を噛み潰した
「嘘をつくのは人間の性。
それを責めるつもりはありません。
しかし、《嘘をついた》という事実を、
事実として世間に広めるのが雑誌の仕事です。
それを世間が責めるかもしれません。
しかし、
私達の出版社のような情報屋がやっていることは
ただあなたが嘘をついたという事実を伝えたまでで、あなたのような嘘つきを責めるように世間を煽っているわけではないのですよ。」
「つまり、何ですか」
「つまり、嘘をついても構わないが
嘘をついた分の代償を払うことを