触って、七瀬。ー青い冬ー
第19章 夢色の雨
予め覚悟しておけ、ということです」
何を言う、悪魔が。
「嘘をついてるのは週刊誌でもなんでも、
情報を売る側じゃないですか」
僕の経験からしたら
《煙のないところにも、火は立つ》
これは絶対に覚えておかなくてはいけない
それを忘れるな、絶対に
き、と睨むと桃屋は目を細めた
「情報屋の方が嘘つきだと。
…そういう場合もありますが、
情報屋は情報屋なりに代償を払うことは
きちんと覚悟していますから」
熱い手が太ももに触れた
そのまま足が持ち上げられる
「あ、え、」
そうだ、隠すものが何もない
逃げる方法もない
桃屋がベッドに転がっていたローションを取った
お腹のあたりに垂らされる
少し冷たい
「逃げないんですか」
出されたローションを指先にとって
それが穴に塗られる
「っあ、…っ」
声にならない声はもう自分では聞き飽きた
こんな情けない声を上げるのももううんざりだ
夢が夢じゃないと知ってこれほどがっかりするとは
朝が近づく度
「っ、はぁ、あっ、く」
首が締められていく日々
逃げ場が一つ一つ潰されていく
苦しい
明日が恐ろしい
「柔らかくなってますね」
理由もなく
桃屋は指をゆっくり差し込んで行く
「っう、あっ…は、あぁ」
いつからこの異物感に快感を覚えるようになったんだろう
気持ち悪いと突き放さなくなったんだろう
慣れてしまったんだろう
くり、ぐり、と指が壁を押しながら探る
「ん、ん、あ、」
ぐり
「はあっ」
簡単に見つかってしまう
「ここですか」
わかったら一度引き抜かれて
今度は二本入ってくる
「うっ、うう」
どうしたって1本目から2本目に増えるときは
受け入れがたく、恐ろしい
それでも同じ場所にたどり着く
ぐり
「っん、っふ…」
全身が浮くような感覚
抗えない神経の興奮
「気持ちいいですか」
冷静な声がアンケートを取る
そんなものに絶対にはい、とは言いたくない
「っ、き…聞く、な」
もう怒りなのかなんなのかわからない
ただ、敬語とか使うのが馬鹿らしいと思うくらい
頭が働くのをやめていた
「それはお願いですか?」
ぐり、ぐり、ぐり
びかびか頭の中で光っている
押されたところが熱く腫れて脈を打つ
「っあ!っん、んっ、あああっ」