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触って、七瀬。ー青い冬ー

第20章 歪形の愛執



死ぬ、と彼は

笑って言った

そして一言伝言を残して





「第65回朱鷺和学園文化祭の開催を宣言します」



陽気な音楽と風船

キラキラ光るラメのついた女子の頬



俺は一人で窓の外を眺めていた


ああ、今年の文化祭こそは
七瀬と過ごせると思っていたのに


儚く消えていった青春



「オイコラ高梨!サボってねーでシフト入れ!」

叫んだのは三刀屋だった

バスケ部は今年、たこ焼きを出店で売ることになっていて

油で冷凍のたこ焼きを揚げ、ソース、マヨネーズ、青のり、鰹節をかけるという簡単調理のシフトと

受付で会計とオーダーを取る割と忙しいシフトがあり


俺は有無を言わさず受付に回された


「お前は顔だけが取り柄なんだからその顔で出来るだけ多く女子に買わせろ!いいな!どんな手を使ってもいい!今日だけは許す!」

三刀屋は頭にバンダナを巻いて、手にはたこ焼きのパックを持っていた

暑苦しいやる気だ…

いや、俺だってやる気がないわけじゃないが
七瀬がいなけりゃこんな祭りはただの無給バイトだ

「へーへー」

出店は校舎の中央にある中庭に集められていて
そこは本当にどこかのフェスみたいに客で賑わっていた


受付の前に立ち、ざっとあたりを見回してみる


うちの制服じゃない生徒が大勢いる

こういうの、七瀬は多分無理だろうな

あいつは元々人が苦手だから


「いらっしゃいませー!
たこ焼きいかがっすかあー!」


声を張り上げてみると、瞬く間に客が群がってくる

こういう時俺はまるで動物園のパンダになった気分になる


ただ寝て食っててもみんなが喜んでくれる

そういう楽な役回りになれることを心から感謝する


「一つください!」

「三つ!」

「写真撮ってもらえますか!」

「あ、私も!」

「ちょっと私が先なんだけど!?」

「あのー」

取り囲まれるのは慣れているが、こうも大勢が一度に集まっているのは珍しい

仕切り直さずに困っていると、三刀屋が飛び出してきて通る声で指示を出した。


「はいはい、わかりました!写真は3つ以上お買い上げの方に限りますが引き受けますよ。5つ以上ならなんとっ!ハグも付きます!10こならもっと大サービス!それは買ってからのお楽しみに〜」


「10こ10こ10こ!」

「ちょっとまって!私も10こ!」

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