触って、七瀬。ー青い冬ー
第20章 歪形の愛執
しかし、あなたと過ごすうちに自分のしたことの罪深さを知った。
あなたは容姿端麗な白鷺家の御曹司である前に、
ひとりの子供であり弱い少年であるということを忘れていた。
その少年の穏やかな生活を乱してしまったことに、
今更ながら罪の意識を感じています。
あなたの隠している情報を集めたことだけではく、
あなたの体も心も自分勝手に操ろうとしていたことにです」
こうして車の中に無理やり詰め込まれて
空を見上げていたことが何度かあった
みんな僕を受け止めて慰めてくれたんだ
だけどみんな離れていった
…高梨はまだ車を運転できないけど
「着きました。行きましょう」
見慣れた景色。
2年間、ここに来るのが嫌だったり楽しみだったり
多分、憂鬱な気分で通った日の方がトータルしたら多いと思う
雨模様の日々だった
けれど、その中に紛れた
赤や青に染まった空に目を奪われ
幸せを感じたことも確かにあった
ひとりでいるのは楽だった
だけど時間が経つのが遅かった
その僕の壊れた時計を直したのはきっと…
「マスクは暑いでしょうから、とりあえずは眼鏡と帽子を被ってください」
渡されたものを身につけると、確かに少し気が楽になった。結局は気分の問題なのだろうか…
そもそも、この学校の生徒達は僕のことをどう思っているんだろうか
突然消えて、雑誌に載って
普通の有名人ほどに遠い存在でもない
…僕は、謎だ
桃屋の後ろに隠れて校門を通った。
久しぶりで、でもなぜか昨日も来たような感覚がした
「…彼も、何か出し物をするんですか」
彼とは、高梨か
「わかりません。学校のことに関しては何も知らないんです」
「そうですか」
今日は、少し大きすぎる校舎に溢れるほどの見物者が来ていた
子供から大人まで、一体どういう目的なのかわからないが
文化祭って、ちゃんと楽しんだことがなかったな
文化祭に限らず、体育祭とか
そういうイベント
中庭に出ると、フランクフルトとかハッシュドポテト、焼き鳥など食品の出店が並んでいる
「何か食べていきましょうか」
「…はい」
人がごちゃごちゃしている
行列と人混み
汚れた空気
耳につく大音量の音楽
やっぱり、気分が悪い
「大丈夫ですか?」
いや、今すぐ帰りたい