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触って、七瀬。ー青い冬ー

第4章 仮面の家族



……


「それで、普通に仲直り?」


高梨は僕にバスケットボールをパスした。
昼休みの体育館には僕と高梨だけだった。

「うーん、仲直りっていうか」


キスしたとは口が裂けても言えない。


「円満な絶交」


「なんだそれ」

僕は高梨にボールを返した。


「ていうかその香田って奴さ、要はお前に構ってもらいたかったってこと?」

高梨がボールを返した。


「え、うーん」


「だって、わざわざ謝りにきたんだから、別に本当に嫌いでいじめてたんじゃないってことだろ」


香田が僕をいじめていたことを正直に言った。そして、昨日会ったことも言った。
その流れで、あいつが俺をいじめていた理由も話さざるを得なくなり…


「そう、なのかなぁ」

高梨にボールを返した。


香田は僕を好きだったから、と言ったが、
それを言うと勘付かれそうな気がする。


「好きだったとか」

高梨からボールがくる。

「な、ないないない!男同士だし」

高梨にボールを返す。


「男同士でも、女同士でも、
別にいいと思うけど」


高梨がボールを返した。
僕はボールを取れなかった。


「え…そう思う?」

僕はボールを拾いに走った。

「別に人の勝手だろ。人を好きになって、それで何か悪いことあるか?別に誰にも迷惑かけてないし。

確率的に言ったら、クラスに一人か二人か、それ以上、そういう人がいるんだから、特に珍しいものでもない」

高梨が言ったので、僕は少し安心した。

「まあ…」

香田は僕をいじめ倒したけど、
恋すること自体には、なんの問題はない。

高梨にボールを返した。


「他人の恋愛に口出すなって思う」


「そうだね」


「…でも香田はやっぱり、好きではなかったのか。」


「なんで?」


「いや…、」


高梨が言葉を濁らせた。

予鈴がなった。


「教室戻るか」

「うん」

香田はたしかに僕を好きだと言ったけど、
高梨は違うと思った。
ということは、やっぱり香田は嘘を言ったのか?

でも、それならキスまでしない。

高梨はどうしてそう思ったのか、聞き出そうとしても勇気が出なかった。


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