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触って、七瀬。ー青い冬ー

第20章 歪形の愛執



「ありがとうございましたー!
とても素晴らしかったです!二人とも美しい歌声で…あ、ここで1つ質問が送られてきました!
七瀬君と出なかったのはどうしてですか?とのことです」



…なんだと

誰だそんな質問を送ったのは


「彼とは今も友達です。でも今回のコンテストは、
本当に大切な人と一緒に参加したかったので」

おおーっと声が上がる

それ、どういう意味


「つ、つまりどういうことでしょうか!」

高梨はいつものように笑った

「ご想像にお任せします」

「お任せします」

ええーっとまた声が上がる

お任せするな、それは


「…なるほどっ!つまりどういうことでしょうか…!皆さんのご想像にお任せです!さて次のカップルはー」


高梨は八霧夏樹先生と一緒にステージを降りた



「いいんですか?聞きに行かなくて」

桃屋が後ろに立っていた。
逃げたってすぐ見つかるとは思っていたけど


「…もうわかりましたよね。
はっきりしたじゃないですか。
これ以上僕にどうしろっていうんですか」


「いえ、ただ気にならないのかなと」


…気にならないと言ったら

嘘だけどでも


「でも私見たよ、あの二人絶対付き合ってる!」

「えー何見たの!?」

「こんなとこじゃ言えないもーん」

「え、それ本気で言ってる?」


すれ違った生徒の声を聞く


「…そういうことらしいですから」


桃屋は諦めたように息を吐いた


「そうですか。それじゃあ…帰りますか?」


「…そうですね」


だから、来なくてよかったのに


「七瀬君」


呼び止められて振り返ると、噂をしていた八霧夏樹がいた

「初めまして…だよね?僕は教育実習生で来てる八霧です。七瀬くんの7組を担当してるんだけど、
七瀬君とだけまだ挨拶できてなかったから」


この変装でもわかる人にはわかるのだろうか
先生にはバレていたらしい


「…わざわざありがとうございます」

八霧先生は見た感じ、しっかりしている、普通の真面目な先生に見える。
こんな人が一生徒とそんな関係になったりするんだろうか。
想像もできないけど

「最近学校の方には来れてないみたいだけど、
大丈夫?もし来れそうな時はできるだけ顔見せに来てもらいたいな。出席日数も今、ギリギリの状態だから…先生達も心配してるんだ」


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