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触って、七瀬。ー青い冬ー

第20章 歪形の愛執



「っ…はぁ」


ちゅ、という熱いキスの音

八霧先生の息


甘い飴がなくならない


「そっち向いて」


小声の言葉も全部聞こえてくる

ベルトを外す音まで


「っあ」

くちゅ、くちゅ


「そこ好き」

「知ってる」


なんで…
僕のこと、壁かなんかと勘違いしてるんじゃないの

たしかにカーテンで見えないけど


「あっ、あ」

先生が声を抑えながら喘ぐ

「…」

息を殺して布団に潜るけど
二人の声は嫌に大きく聞こえる


なんで、僕の体も熱いんだろう


「もう入れて」

「気が早いなあんたは」

「早く」


八霧先生は積極的で
僕とは大違いだった

してほしいことははっきり言って
相手の要求には言われる前に応えてる

だけど僕は…


何にも、気が利かないマグロだ



「っああ…」

「…入った」


それが入ってくる充実感

僕も知っている

だけどもう味わえない



誰が僕を満たしてくれるの

誰が僕を愛してくれるの



体が熱くて、きっと薬のせいだけど

先生がくれた頭痛薬は眠気を誘うのに

飴の方は性欲を掻き立てて交感神経を刺激する


もう、どうしたらいいかわかんない


「はあっ、奥まで…来てる」


僕も…欲しい

何か


知らないふりをして
手の甲を股間に当てた


少しだけ体をずらすと
手の甲に擦れて、仄かに甘い刺激


「っ…」

息が漏れても、きっと気づかれない

行為に夢中な二人には


腰を動かして
優しい刺激で気を紛らわせた

大丈夫…すぐ終わるから

「あ、っああ」


「…イく…」


その声で全身が震えた

「…ぁ」

手が僕の髪に触れた時感じた震え


いく…

「っ…!」

ねえ…なんでその手で触るの




「ああ…気持ちい…」


幸せな声が僕の胸をえぐった

最低だ


僕も

高梨も


パンツの中の粘り気が心底気持ち悪かった



「終わり」

「えー、もう一回」

「あんた授業あんだろ」

「たしかにー」

二人が保健室を出て行った

僕を見ていろ、家に連絡を取れ

という真山先生の指示も無視して



…でもよかった

もう一回、なんてされたら

どうなっていたか



多分飛び出して叫んでたと思う



「…死ねクソ野郎」



……



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