触って、七瀬。ー青い冬ー
第20章 歪形の愛執
俺は
そう、好きな子をいじめるのが好きだったんだ
昔から
そして、
ああ、たしかにあれだけ酷いことをしたんだから
別に嫌われていても当然
好かれていなくても当然
そうやって想いが通じないことの理由づけをする
それをまた繰り返している
だからさ、好きなだけ嫌ってくれないかな
俺も好きなだけいじめるからさ
…そうしたら君が俺を好きじゃなくても生きていける気がするからさ
何言ってるかわからないよな、ごめん
忘れて
俺もいつかは忘れるはずだから
忘れられるはずだから
……
ああ、堪らなく愛おしい…
「おはよう七瀬」
「…」
「1時間目、体育だって」
「…」
俺は知っている
七瀬が体育嫌いなのは、スポーツ嫌いもあるが
一番の理由はこの着替えの時間だ
「女子ー全員出たかー」
週番が教室内に女子がいないことを確認する
しかし、隣の七瀬は一人居心地悪そうに教室の隅に
寄っている
「おっけー」
その合図で着替えを始めるが
ちらりと見ると七瀬は壁に向かって
カーテンの陰に隠れるようにして着替えを慎重にしている
…いや…
そう一度躊躇って
最低最悪な奴に成り果てようと決めた。
「七瀬?何やってんの」
七瀬が隠れているカーテンをよけて覗く
白いワイシャツを脱ぐ途中
白い白い白い肌
きっとこの姿を何時間でも見つめていられると思う
だけどそのうち、ちょっと叩いてみたくなったりするかもしれない
痛がる顔が見たくて
嫌がる顔が見たくて
「たっ、…!」
今、高梨って呼ぼうとした?
七瀬の顔が一瞬で真っ赤になった
ぶるぶると肩を怒りか羞恥かに震わせて
「くっ…!来んな見んな死ね!」
しゃ、喋ったー…!
かわ…
「ぐあっ」
素早いアッパーに、盛大に倒れこむ
まさかその繊細な体からこれほど強烈な暴力を振るわれるとは…
再びカーテンの中に隠れた七瀬が冷淡にいう
「…ぶっ殺すぞ死ね」
七瀬君最近口が悪いの。
まあ俺のせいだけど。
「はいはいごめんね七瀬ちゃん」
「っせえな黙れ」
完全に殻を破って顔を出した凶暴な七瀬は
新鮮で面白い
「おーい、早く着替えろよ!」