触って、七瀬。ー青い冬ー
第20章 歪形の愛執
いや、おこなんじゃなくて多分俺に対してはいつも語尾に「クズ」がつくんだな?
いいね、その調子だ
もっと嫌ってくれて構わないよ
それが七瀬はもう大丈夫って印だから
「…何笑ってんだよ気持ち悪いな」
え、笑ってる?俺
「ごめんごめん」
流石にクズ呼ばわりで喜ぶ奴はアウトだよな?
やばいよな?
いかんいかん、いくら相手が七瀬だからって…
目を覚ませ俺
「…つーかなんでまだ制服なんだよ!」
おっ…
マジで怒っとる
「いやあ、もうなんかいいかなーつって?
寒いし。
どうせあれだろ、気づかねえだろセンセ」
「気づいてるから派遣されたんだよふざけんな」
ああ、お気づきになられたか…
「めんどくせえええーなあああー!」
もうヤダよー寝たいよー
ってより、七瀬が構ってくれるから
もうちょい駄々こねようか。
我ながらこれはうぜえ。
「は?お前のために4階まで階段登る方がめんどくせえわさっさと着替えろ」
体育館は1階です。
「仰る通りでございまして…」
「わかったら早く来い」
ぷいと背を向けて行ってしまう
「七瀬」
あ、呼び止めてしまった
七瀬がまた心底嫌そうに振り返る
舌打ちしそうな勢いだ
というか多分してる
あー…どうしようか
「手伝って、着替え」
「は?馬鹿か」
…秒殺
七瀬はまたぷいと背を向けて去ろうとする
「あー!!じゃあもう行かねえわあああー!
センセによろしくなあああっ」
大声が教室にこだまする
多分、授業中の他クラスにもこだましている
さりとて、もうなりふり構ってられん
俺を構え!!!さあ!!!
「はあ!?ガキか」
「なんでえええっなんでだよおおおっ
ななせえええええっ」
「っるせえな一回黙れ!」
「…はい」
七瀬がはあ、はあ、と肩を揺らしている
大声を出すだけでこの息切れ
どんだけ普段声出してないんだ君は
…出せないのか。
「黙った。はい、手伝え」
手術台に眠る患者の如く大人しく寝転んだ
「本当に無理」
七瀬のガチトーンでの拒否
そうとくればこういく
「千円」
金だ!
「安」
む、ならば
「二千円」
「安すぎる」
さすが人気モデル
「三…三万」
これは少し痛い、痛いが背に腹は…
「値段の問題じゃねえ」
おう…クリティカルヒット…