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触って、七瀬。ー青い冬ー

第20章 歪形の愛執



医者のあの威圧的な感じ…
病院特有の匂い…
嫌に長く感じる待ち時間…
受付の人の冷たさ…

「…」

ぱた、ぱた、と上靴が音を立てて
七瀬が教卓に寝転がった俺の横に立つ

七瀬がシャツの襟にそっと手を伸ばす

とん、とネクタイの結び目が引かれて解ける

しゅる、と擦れる音がしてネクタイが外れたら
七瀬はそれを床に投げる

「あー投げないでよ」

「せえ」

「ボタン外して」

「…全部やんの」

「うん全部最後まで、やって」

はあ、とため息をつかれて
七瀬がボタンをゆっくり外す

まさかあの

【二度と触るな宣言】からここまで来るとは
俺も成長したなあ…クズなりに

ん、成長したのか?


「腕上げろ」

言われた通り、腕を上げる

手首についてるボタンも外される

体を起こしてシャツを脱ぐ

中は薄手のTシャツ

「自分で着ろ」

「仕方ないな」

白いTシャツジャージを着る

「ベルト」

「はぁ…」

七瀬はベルトを外す…と見せかけて、俺のスラックスのポケットに手を入れる

「おっとおっと?七瀬さん」

ち、と舌打ちされる

「残念、俺がしっかり手に握ってますので」

「そういうところだけは周到なんですね」

「ええ、お褒めの言葉ありがとう」


七瀬はベルトを外す

かちゃかちゃ金具の音がする

おお、これはいやらしいです


「…」

金具を外したところで七瀬が手を止める


「チャック」


「…」

サイテー、という女子の目と似ている


「早く、やって」

「…」

七瀬が怒りを押し込めてチャックを下ろす


…なんという快感

こうしてドMという人種は俺の世界を救う


「…後はいいでしょ」

「まあ、よしとするか」

七瀬が手を出す


「よこせ」


「え?そんな態度でいいんですか?」

七瀬は舌打ちをした
そして、憎しみのこもった声で言う

「…ください」

飴を渡そうと手のひらを開く

そこでふと、疑問に思う

飴を取ろうとした七瀬の手を避ける

「ちょっ」

「これ今舐めんの?」

「…それが何か」

「処理は?」

「ショリ…?」

「これ媚薬じゃん、今舐めたらやばくね?」

「それは…」


やばくね、というのは七瀬がというより俺が、だ


「関係ないじゃん、そんなの」

七瀬は耳を赤くしている


「へえー、じゃあ」

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