触って、七瀬。ー青い冬ー
第20章 歪形の愛執
七瀬の手が俺の肩を掴んで強く押し返す
身長が俺より低いから下から押し上げるのは
上から押さえつける力には勝てない
七瀬はこれまでにない強い抵抗を見せた
今までのは嫌よ嫌よも、と捉えられるくらいの
可愛いものだったのだ
逆に対抗して見せるのが七瀬の愛情表現でもあったように思える
抵抗すること自体を楽しんでさえいたかもしれない
抵抗している自分を作ることで、
誰かにフツウなら嫌がることをされて
異常にも感じてしまっている自分をごまかしていたのかもしれない
しかし今のこの抵抗はそのお遊びや建前の類とは
違う、まるで比べるものじゃない
その証拠に抵抗は実力を行使する
七瀬は膝で一発繰り出そうと
足をあげる
その足が振りかぶって股間を直撃する
「っう"お」
「っどけこのク…」
しかしその一撃を食らった俺に油断した七瀬に
痛みに悶えるまま地面に向かって自由落下する俺が思い切り倒れこむ
「うわちょっ、え、わあっ!」
もちろん体重で言えば俺の方が10キロは優に勝っているわけだから
綺麗に七瀬は地面にねじ伏せられる
「お"、も"…」
「弱すぎ、七瀬ちゃん」
倒れ込んだ姿勢のまま目の前にある耳たぶを噛む
「んんっ」
何億年ぶりだよ、このエロい鳴き声
脳の中でドーパミンみたいな化学物質が弾ける
この声が一番の媚薬
「お口開けてよ、ね?」
誰も知らない七瀬の弱点
耳珠に舌先を這わせればそれでいい
「は、あっ」
ぽっと空いた紅い唇の隙間に舌を返し
少しだけ小さくなった飴を移した
ーガラガラ
扉が開いた
体は地面に転がっているだけ
俺はチャック下ろしてるし
七瀬は俺に乗っかられてTシャツの裾がまくれて
ヘソ出してるし
飴で目とろけてるし
地面に伏せれば机の陰になって
なんとかやり過ごせるか
隠れんぼの言い出しっぺは俺だったのに
七瀬はすっかり上の空だ
「…いないか?」
このままじゃつまらないか
「いるよ」
体を起こした
「え?あ、高梨君!そんなところに」
「ちょっと取り込み中だったんだよ。
あ、ちょっと君も良かったら手伝ってくれない?」
「いいけど、何…」
この生徒にその趣味があるかは知らないが
七瀬はノンケに受けるタイプだから多分大丈夫