触って、七瀬。ー青い冬ー
第20章 歪形の愛執
「っ…は、」
ぶるぶると体が震えだした
仕舞われてしまったリモコンがとてつもなく憎らしい
嫌だと言っておいて突き放したら
とてつもなく欲しくなってしまうんだ
悪いくせなんだ
本当にいらないの?もうなくなっちゃうよって
なんか偉そうに聞いてくるから
そんな餌はいらない、いらねえって
強がっていらないふりをしてみるんだ
そうすると気づく
あれ、やっぱり欲しかったんだな
「…う、っう、ん、」
くれないなら仕方がない
僕のせいだ
欲しいって言わなかったんだから
だけど聞いてきたのが高梨だったのが悪い
あいつから何かをもらうためにねだるくらいなら
一人で頑張って満足した方が何倍もマシである
尻に刺さっていた棒をいつも当てる
あの場所に擦り付けるように腰を揺らした
こういう動きをするのが本当に嫌だ
自分がどれだけ不純で汚れているか
自分で自分に教えこんでるようだ
腰の動きは妙に慣れてしまっていて
多分ぎこちない清楚さや潔白さや純粋さは
僕にはもうない
あるのは、欲にまみれた動物の体だけ
声を出さないのは苦じゃない
いつも、家で一人でする時も
息が荒くなってしまうとか
体が熱くなってベッドが軋むとか
手がどろどろに汚れてしまうとか
嫌な体液の匂いがシーツに染み付くとか
そんなことは日常茶飯事だったけど
声だけは出なかった
だから逆に羨ましかった
AVで声を恥ずかしげもなくだせる女優が
男の喘ぎ声なんて気持ち悪いだけじゃないか
まして、一人でやって声を出すなんてありえない
我慢するというより出ないのが当たり前だったし
だから授業中だって、全く害はない
少し荒い息を殺していればいい
緩いジャージの袖を口に当てて
息をそこへ吐いた
むわっと広がってさらに体も熱くなった
慣れた腹の中の壁の奥にある何かに当たる刺激が
ぐちゅりと音を立てて脳まで溶かす
見られるかも聞かれるかも
そんなドキドキ感なんかいらない
家の中で誰の目も気にせずした方がいい
だけど高梨はコレが好きなんだ
人目に晒される僕を見るのが好きなんだ
訳がわからない
あの頭の中で何が起こってるのかわからない
ただ僕は教え込まれた気持ちのいい場所に
オモチャの先を当てるだけで満足だった
ぴんと伸びた足を震えさせながら
何度もパンツの中に精液を漏らした