触って、七瀬。ー青い冬ー
第21章 湖上の雫
降りないでいようかと思ったが、七瀬が小さく体を捩ったので思わず扉を開けた
「ああ、そういえば、あの飴はどちらで?」
車内から桃屋が聞いた。
あの飴、というのは俺が七瀬にやった奴か
「小学生にやる飴だよ」
「しかし、その飴で禁断症状が収まっているらしいのですが…成分は本当に普通の飴と同じですか」
「さあな、媚薬だって言って舐めさせたけど。
思い込み強いから効いたんじゃねえの?」
「まさか、そんなはずは…」
「そんなに欲しいならあんたも舐めるか?
ただの飴だ」
「は、はあ…?」
桃屋が投げられた飴を疑わしげにじっと見つめた
「う、…ん」
七瀬が小さく喉を鳴らした
俺も小さく咳払いをした
「それじゃあ、今回だけは大人しく帰ります。
また次会ったら足の骨の一本くらいは折りますから、そのつもりで」
高校生らしく、というのはとても難しい言葉だ
高校生になった頃はあまりに自分が幼くて驚いたが、高校生を卒業する今はあまりに自分が捻れていて驚いている。
一体いつになったら見た目に見合う中身が出来上がるんだろうか。
……