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触って、七瀬。ー青い冬ー

第21章 湖上の雫

平賀さんが言いづらそうに頭をかいた

「折り入って相談があるんだ」

僕に相談…改まって何だろう?
平賀さんはいつも現場の仕切り役で、
メイクさんや雑誌の編集部からも信頼されている頼れる大人だ。そんな人が僕に相談なんて、一体なんだろう

「話を少し聞いてもらうだけで良いんだ。
誰にも聞かれたくない事でね」

誰にも?
平賀さんはちら、と桃屋を見た
ぴく、と桃屋は眉を動かした

「…では、私は先に失礼致します」

桃屋は不服な顔をしながらも廊下を歩いて去った。
あの人、最近行動が読めないな

僕を脅してるくせに、やけに世話焼きだったりするし…いやどうだっていいそんなことは。

「それで、相談って」

言いかけた時、向こうから同い年くらいに見える背の高い男子が歩いてきた。歩き方とスタイルからしてモデルに違いない。いかにも社交的で人生楽しんでますとでも言いたげな、僕の一番関わりたくないタイプの人種に見える。

「あ、平賀さん!こんにちは」

すごい、足が細い、長い、顔が小さい
腰の位置が高い、
髪が一本一本見えるくらいサラサラしている

「紘、おつかれ」

へへ、と彼は笑って平賀さんに挨拶していく

「明日の撮影もよろしくお願いしますね」

人懐っこい目で平賀さんを見ている
八方美人ともいう人当たりの良さげな感じは初期の高梨を彷彿ともさせるが、この人の場合は少しアレとは違う。なんというか、野心が見えるような…

「うん、明日な」

平賀さんが返事をして僕に向き直った後、
紘は歩いて行ったが、振り返って僕を見た。

ん?どういう視線だろうそれは

一応、同期のようだし、と思って礼をしたら
大きい目で睨まれた。

ええっ、怖い、何なんだよ…

固まっていたら、紘は小馬鹿にしたように笑って去っていった。

なんだ、こっちがチビだから笑ってんのか
それとも新人いじめか?

「…ここじゃあ人目につく。場所を変えようか」

平賀さんは決まり悪そうに言って、一つの小さな会議室に入った

「よし、ここなら大丈夫」

「何かあったんですか?」

「相談っていうよりかは、確認なんだけどさ」

ここは少し薄暗い。
窓も一応あるが、陽の光はブラインドで遮られている。少し息苦しい。

「はい」

大きいテーブルは小さい部屋をより狭くしている

「七瀬君は色々聞かされた上でここに来てるんだよね?」

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