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触って、七瀬。ー青い冬ー

第21章 湖上の雫



「見てごらん、そこにカメラが置いてあるんだ
全部撮ってあげるから俺のコレクションにしてあげる」

コレクション
僕はいつも誰かのモノ
意思のない石になって削られながら
形を変えながら絶えず人の手を転々と

ジリジリ焼けた頭には甘いものしか届かない

「うぁっ、あっやっ、んんっ、んんっ」

瞼の裏にシャッターとフラッシュライト
ピカピカ光ってた

誰の手だっていい
その瞬間をくれるなら
変わらないはず

苦しい股間が解放されていた

「大っきいね、透明なの垂れてるよ」

じゅ、じゅぽ

生暖かくねっとりした口内に包まれた

「っ…はぁ、」

こんな人に舐められても気持ちいいわけがなかった
舌に舐められる度に小さくなっていく気がした

【夕紀】

何でこんな時に思い出すんだろう

この声は先生の声だ

僕に全てを教えてくれた
人生のことも、ピアノのことも
楽しいお遊びも

「はぁ…、もう、入れていいよね?」

僕の手首を掴む手はまるで僕を握り潰すようで
痛みで開いた口からは喉がかすれる音だけが漏れた

「っ…!!」

「大丈夫だよ…優しくするからね」

首元に噛みつかれる

「いっ…!!」

「七瀬君は俺のものだから…皆がわかるように印をつけてあげるよ」

嫌だ、と叫ぶ声も出なくて
首や腕、脇腹に赤い歯形がつけられていった
どこまで深く、呪いの刻印のように


【君はいい子だ】


先生がもういないことはわかっている
だけどもし、もっと先生と会えていたら
高校生になった時、レッスンをやめていなかったら
もっと長い間教えてもらえていたはずなのに
僕は、先生との行為を避けて
先生を避けていた

そんなことで先生を避けてしまったなんて
なんて馬鹿だったんだろう
もし、もし僕が先生を遠ざけようとしなかったら
きっと先生は親父に殴られなかっただろうし
僕が家を出る真似もしなかったかもしれないし
高梨に頼ることもなかった

先生は確かに僕に不用意に手をかけて

犯罪と言われてもきっと否定はできない行為を重ねてしまった

けれど先生は僕を愛してくれていたはずだ

【僕は君を愛していたよ】

あの日先生はしっかり伝えてくれた


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