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触って、七瀬。ー青い冬ー

第22章 白銀の砂



「…」

「君は多分もう、初対面で襲いかけた俺のことなんか信用できないって思ってるかもしれないけど
これから取り返せるなら精一杯努力はするから
考え直してもらえないかな…
君以上の人にはこの先会えないと思う。
だから俺も君に見合うだけの努力をしてみたい。
俺の全部、君にあげるから。

…また声が出るようになったら、教えて」

「…」

「…じゃあ、またね。おやすみ」


毎日隣に座っていた彼と《彼女》と、一体何が違ってここまであの男を狂わせたのだろう







「いいですか?この部屋にお二方が3日間、仲良く暮らしていられるかどうかの実験をします」


はい、と手渡されたのは一人一つの巾着袋。
部屋に入ってから開けること、中身は秘密。

「金剛寺、紘さん…芸名ですか」

「それが何か問題?」

「いえ、母国はロシアとお聞きしましたが
…ガーデニングはお好きですか?」

「…聞いてどうしたいの。好きだけど」

「そうですか。私も好きなんですよ。花の香りには時に中毒性さえ感じます」

「…」

紘は黙り込んでじっと桃屋を見ていた。
桃屋は微笑み、僕らの背を押して部屋に押し込んだ

「桃屋さん、そもそもなんでそんな実験が必要なんてすか。まだ一緒に暮らすなんて決まってないのに、それに僕達は一応兄弟で」

「兄弟が、仲睦まじいものとは限りませんよ。
血の繋がりの儚さをあなたはよくご存知でしょう?
旦那様のお知り合いにもご兄弟がいらっしゃいましたが、彼らは確か貴方のせいで…」

「その話なんで…まあ、終わった話ですけど
とにかく、こんなの必要ないですから」

「いいよ、楽しそうだしやってみよう。心配しないで。七瀬ともっと話してみたいし」

紘は半ば挑戦するように宣言した
紘と過ごすのが嫌なわけじゃなく、むしろ美しい彫刻を眺めていられるならご褒美だが
桃屋が何を企んでいるのか掴めないのが非常に不安だ

「お風呂やお手洗いは部屋に備え付けのものをお使いください。3日間この部屋からの出入りは禁止ですから、何かございましたら私にご連絡下さい。
では」

「えっ?それって軟禁じゃ」

「では、幸運を」

バタンと大きな扉は閉じられ、僕らは部屋に閉じ込められた

「…とりあえず、3日過ごせばいいんだ。
あの人が俺を疑うのもわかるよ
言ってみれば俺は部外者だし

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